JPモルガン・チェースが来年より、プライベートバンキング(PB)部門の顧客の最低運用資産額を500万ドル(約5億885万円)から1000万ドル(約10億1770万円)に引き上げる。
富裕層顧客をふるいにかけることによってコスト削減を狙う動きだが、現在の顧客の1割が一段格下げしたサービスを受けることになると予想されており、顧客格差に対する非難もあちらこちらから聞こえてくる。
ミリオネアはもう「優遇」に値しない?プレミアサービスは10億円クラスの特権に
富裕層顧客への絞りこみについては今年3月に米メディアが報じていたこともあり、特に驚くような話題ではないが、どうやら予想以上の顧客格差が広がることになりそうな気配だ。
「最大の利益を生みだす層に最高のサービスを提供する」という戦略は、コスト面では十分理にかなっているものの、JPモルガンの本来の意図は最低運用資産額の引きあげによって、顧客が外部に所有している資産をかき集めるところにあるようだ。
プレミアムサービスを期待する顧客はライバル銀行に預けいれている資産をJPモルガンの口座に移し、1000万ドルのラインを満たそうとするだろう。
また100万ドル(約1億180万円)クラスの顧客が増えすぎたことで「アドバイザーの時間が必要以上に食われている」という現状を改善する目的もあるはずだ。
今回の変更でもうひとつ話題になっているのは、新たな最低運用資産額が弁護士にも採用されるようになる点である。
これまではニューヨークに拠点を置くSkadden Arps,Meagher And Flomなど、一部の法律事務所に与えられていた「プライベートバンキングへのアクセス」という特権が廃止され、1000万ドル以上の運用資産を所有する弁護士のみがプレミアサービスに、500万ドル以上ならば標準サービスと、一般の顧客同様に分類されるようになる。
しかし「効率化」という言葉で片付けられるほど、世間の反応は甘くはないようだ。非難の声は、JPモルガンは最上クラスの顧客へのサービスを、それ以下の顧客へのサービスを縮小することで向上させようとしているという一点に集中しており、少なくとも企業のイメージアップに貢献しない方向性なのは確かだろう。
運用資産額の最低限度が高くなればなるほど、ピラミッドの頂点以外の顧客はほかのサービスに流れやすくなるだろう。折しも世間では、ロボットアドバイザーというお手軽投資が人気をさらっている。
ミリオネアに食傷気味といった感の強いJPモルガンだが、効率化が「傲慢」と見なされなれかねない危険要素を含んでいることは否定できない。(ZUU online 編集部)
【編集部のオススメ記事】
・「信用経済」という新たな尺度 あなたの信用力はどれくらい?(PR)
・資産2億円超の億り人が明かす「伸びない投資家」の特徴とは?
・会社で「食事」を手間なく、おいしく出す方法(PR)
・年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
・元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意(PR)