日本人は「お金」の話を他人にするのは賤しいこと、といつからか刷り込まれ、「武士は食わねど高楊枝」など、お金以上に大切な心意気を大切にする気概が美徳と言われてきた。

しかし、世の中が複雑化、多様化していく中で、日本人はあまりにもお金のことを知らなすぎるのではないだろうか。実際、義務教育で一般的なお金に関する授業を受けた経験のある方々は、そんなに多くはないのが現状だ。ここでは、日本人の金融教育の現状を確認したあとで、実際に年収と金融リテラシーにはどれくらい関係があるのかを見ていこう。

日本人のマネー教育不足

日本FP協会では、全国の中学校、高校に専門のインストラクターによる出張授業を提案し、生徒たちにお金の知識の普及、パーソナルファイナンス教育に努めている。一人ひとりの生き方に沿った最適なライフプランをイメージし、それに一体いくらかかるのかなど、具体的な事例を話している。講師の派遣費用やテキストなどは全部FP協会側が用意するので、学校側が提供するのは場所と時間だけである。

しかし、この制度を使っている学校は、あまり多くないようだ。なぜなら、貴重な時間を少しでも受験関連科目の勉強に充て、将来のお金の知識など後回しだという学校が多いと聞く。確かに2~3時間程度の時間で効果があるのかどうか、疑心暗鬼になるのもわからなくない。しかし、社会に出るまで給与明細の見方すら分からないのは、いかがなものか。天引きされている社会保険料や税金が年間一体いくらで、その使い道がどうなっているのかを知識として持つことは、当然必要なことだ。

特にサラリーマンの場合、自動的に源泉徴収されるので、改めて自分の給与から年間いくらの所得税や住民税を払い、さらに健康保険料、厚生年金、雇用保険を払っているのか、全く気にしない人も少なくない。このことが、自分たちが収めた税金への無関心につながり、ひいては投票率の低下、政治への無関心につながっている、とは言い過ぎだろうか。