(写真=FinTech online編集部)
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FinTechスタートアップへの転職に関心のある金融業界関係者を対象としたセミナー「金融業界の人材が盛り上げるFinTech!~さらなる活躍を実現するためのキャリアビルディング~」が9月14日夜、東京・丸の内のインテリジェンスで行われた。

マネーフォワードやウェルスナビ、コイニー、ユビレジという代表的なスタートアップの採用責任者らが登壇。会場には約30人が訪れ、各企業が求めている人物像とそこから見える今後のFinTechの中で必要になる人材像に迫るトークに耳を傾けた。

人事担当者が語る「なぜ私がこの会社に入ったか」「金融出身者はいるのか」

このセミナーは9月5日に開かれた金融機関の人事担当者向けセミナーに続くイベント。主催のインテリジェンスが運営する転職サービスDODAでは金融業界での求人案件を多数抱えており、FinTech分野での人材紹介に力を注いでいる。

セミナーでは冒頭、ZUU取締役の一村明博・FinTech推進支援室長が講演。日本のFinTechの現状を解説したうえで、将来の見通しについても触れ、「今後はカスタマーエクスペリエンスがキーワードになる」などと述べた。

その後行われたパネルディスカッションに登壇したのは、ウェルスナビの柴山和久CEO、ユビレジ事業統括セールスマネージャーの平野剛行氏、マネーフォワード社長室採用リーダーの小川昌之氏、コイニーの井尾慎之介取締役だ。

来場者がFinTech企業への転職に興味を持っていると考えられることもあって、登壇者に対して、「なぜ参画・入社したのか」という質問が投げかけられた。

マネーフォワードの小川氏は、「(マネーフォワードは)お金という生きて行くうえで不可欠なこと、お金に関する課題を解決しようとしている企業。(そうしたお金に関するあらゆる課題解決を)実現できたらと考えるとワクワクしたから」などと説明した。

マネーフォワード 小川氏
マネーフォワード 小川氏

コイニーに参加した理由について井尾氏は、「一つは創業者である佐俣の会社に対する考え方(すべてはかんたん(簡単)のために)に共感したから。あとは以前、PayPal時代に決済に関わって、その難しさとやりがい、楽しさを知っていたから」などと話した。

コイニー 井尾氏
コイニー 井尾氏

また井尾氏は、同社の金融機関出身者の状況について、金融サービス出身者は3人いて、井尾氏、代表の佐俣氏(ともにペイパル日本法人)、もう一人はJCB出身であること、過去には銀行のインフラ責任者を務めた経験を持つエンジニアも所属していたと説明した。

そのうえで、「IT、ウェブサービス出身者が多いため、スピード感をもって仕事が進む反面、金融の知識が欠けているので、その点は課題。法律的に問題がありそうなことや、業界構造上、克服できないことを進めていて無駄なことをしている可能性もある」と指摘。「その反面、常識やしがらみ、にとらわれると新しいことはできないので、過去の常識や金融機関勤務者にとっての常識を一旦捨てられることが、スタートアップ参画には不可欠だと思う」などと話した。

どんな人が活躍しているか どんな人が欲しいか?

FinTechスタートアップではどんな人材が活躍できるのだろうか。

ウェルスナビの柴山氏は「フィンテックの本質は、金融機関の現場にある」との考えを披露。「金融機関に勤めている人なら実は日ごろ思いついていたり、検討・議論していたりすること、そういうアイデアは現場にある。それを本当に実行できるか。どれだけ早くできるか。コストをかけずにできるか、ユーザーからみていいものにできるかが大事」と説明した。

ウェルスナビ 柴山氏
ウェルスナビ 柴山氏

その上で、「シリコンバレーと日本との決定的な差は、ユーザーにとっていいものを追い求めて実現するか、いつの間にか自分たちの都合のいいサービスにすりかわっているかがだと思う。そこを乗り越えようと思えるかどうかが、スタートアップで活躍できるかの分かれ目」などと話した。

「社内に金融機関出身者が多いか、どういう人材が欲しいか」という問いに対してユビレジの平野氏は、同社にはIT企業出身者が多く、実は金融機関出身者がいないとしたうえで、「この会社はこうすべきだという意見を持って発信できる人が欲しい」などと述べた。

ファシリテーターからの「金融や経済の知識は必要ない?」という質問に対しては、今後は営業に力を入れるにあたり経営者と話せる人材が必要であることを説明。「たとえばレジを導入することで、会社の経営、財務諸表にどういう影響があるのか、そういった会話が経営者とできる人は魅力的だと思う」と補足した。

ユビレジ 平野氏
ユビレジ 平野氏

マネーフォワードの小川氏は「月並みですがパッションがあること。金融機関ではできないことが、ベンチャーではできる。問題意識をもってジョインしてくださる方のほうが活躍している」と話した。欲しい人材の要件として、「課題意識、問題意識をもっているだけでなく、それをどう解決しようかという視座が大切。フィンテックでイノベーションを起こしているのはテクノロジーなので、それを信じられること」なとど述べ、「探しているポジションにマッチする経験を持っている人はすぐ採用したい」とした。

コイニー井尾氏は「気合、パッションがある人。IT系の単語はたくさんでてくるが、知らないとついてこれないということはない。勉強する熱意があればいい。金融機関で営業やってる方で、システム、IT関わってなくてもいい。社会をかえたい、本来あるべき姿にしたいという熱意を持っている人」などと話した。

ユビレジの平野氏は人材採用の際に重視するポイントは3つあるといい、「売ることができるか」(これまでに成果を出してきたか)、「ユビレジのカルチャーにフィットするか」、「なぜユビレジで働きたいのか、その理由」と述べた。

ウェルスナビの柴山氏は「一番ほしいのは朝から晩まで私と一緒に働いてくれる人。CEO室長、社長補佐のような存在が2~3人欲しい」と話した。理由として、「現在、10社くらいの金融機関などと協業のお話があり、毎日数社、トップと面談をしている。それぞれの打ち合わせに全力で取り組んでいるので、いくら身があっても足りない」と説明した。

10月にもセミナー開催へ

最後の質問として、「金融機関とフィンテック企業との関係性はどのようになるべきか?」というものが挙げられると、いずれの企業からも「共生」「協力」が挙げられた。ウェルスナビの柴山氏は、金融機関は若い人向けのサービスを苦手としていて、顧客層も高齢化している。その点、サービス作り、モノ作りができるスタートアップとは、金融サービスを次の段階に進めるうえで補完関係が持てるなどと指摘した。

このほかにも今後のFinTech分野の広がり、社会をどう変えるか、その可能性や課題などについての議論も繰り広げられた。

その後、質疑応答の時間には参加者から登壇者にさまざまな質問が投げかけられていた。またDODA金融業界専任のキャリアアドバイザーを務めるインテリジェンスの鈴木智勝氏 が、金融業界の転職動向や傾向などについて解説した。同社は今後もFinTech人材の採用、転職に関するイベントやセミナーを開催していくといい、金融機関勤務者を対象にしたセミナーを10月にも行う予定だ。(FinTech online編集部)

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