厚生労働省が組合員30人以上の5189組合(有効回答3215)を対象に調査したところ、労使関係について「安定的に維持している」と回答した組合が50%で、「おおむね安定的に維持」が38%だったそうだ(平成27年労使間の交渉等に関する実態調査)。合計で約9割の労働組合が「労使関係は安定的」していると回答している。

しかし労働組合の組織率は、1975年の約34%をピークとして一貫として下がり続けている。この10年間は17〜18%程度で推移している事をかんがみれば、労働組合のある企業は5社に1社程度という事になる。

厚労省の資料によると、85年の4000万人程度だった雇用者数は、2015年には5000万人を超えるなどかなり増えているが、労組組合員数は1000万人前後で大きくは変わっていない。15年が988万2000人だったが、この30年間のピークは94年の1200万人だ。

有志による自発型の労働組合もある

日本の労働組合は団体の成立の経緯によって3つのタイプに分かれている。まず1つ目は重厚長大産業を中心とした企業内労働組合が存在する、自動車、鉄鋼、電機など日本の高度経済成長をけん引してきた大企業だ。

企業内労働組合の特徴は春闘で定期昇給や年間賞与額などを労使で激しく交渉する場面もあるが、会社と労働組合は実質的に運命共同体なので最終的には落としどころを見つけて合意するといった形でいく場合のほうが多い。

2つ目は有志自発型の労働組合だ。これはもともと労働組合が存在しなかった会社が有志により労働組合が立ち上げられるパターンだ。有名なところではEC大手のアマゾン・ジャパンやクックパッドなどがこのタイプの労働組合だ。

3つ目はユニオン(合同労働組合)である。これはパートやアルバイトの多い中小企業の労働者や非正規労働者で結成するパターンになるが、企業内で有志による自発型の労働組合を結成すことが困難な場合に1人でも加入できる組合だ。

このように労働組合のない会社であっても、自主的に労働組合を結成して交渉に当たることができるのは知っておいたほうが良い。残業代の未払いや解雇の撤回などから、自分を守るには裁判や労働審判を起こす必要が出ることもある。

従来型労働組合の衰退と新たな組合の結成

昔から存在する大手中心の企業内労働組合は縮小しているものの、これだけをもって労働組合が衰退しているとは断言できない面もある。

従来型の企業内労働組合は縮小傾向にあるが働き方の多様化から有志による自発型やユニオンは今後も減る事は無いのかもしれない。

労働組合が結成されることで経営陣への大きなプレッシャーつなることは確かだ。たとえば経営陣が労働組合に加担した者を解雇する場面があったら、直ちに団体交渉を行える強みは大きく「物言う労働組合」として心強いものがある。

大手企業の「御用組合」のような労働組合は、経営側と使用者側との関係は「蜜月の関係」と言われてもいる中で、「トヨタ自動車の春闘」とか「公務員にボーナスが支給されました」とかの話題に縁遠い人も沢山存在している事を忘れてならないのだ。

パート労働者の組合員は増えている

厚生労働省が実施した労働組合基礎調査は、国内すべての労働組合を対象として1947年以降、毎年実施している一般統計だ。その中で目を引くのがパートタイム労働者の状況だが、労働組合員数(単位労働組合)は増えているのだ。

前年に比べて5万5000人(5.7%)の増となっており、全労働組合員数に占める割合を見ても10.4%となっている。推定組織率(短時間雇用者数)に占めるパートタイム労働者の労働組合員数の割合)は7.0%となっている。

企業外の労働組合に加入したほうが何か重大な問題が発生した場合に、労働基準監督署へ駆け込んだり労働審判を起こしたりしやすいと考えられているのかもしれない。

何のために存在するのか? 労働組合とは

労働組合とは、労働者の連帯組織で労働環境の向上などの共通目標達成を目的とする集団だ。そして労働者と使用者(会社側)は対等な関係にあるとしている。

しかし実際は、労働者が1人で会社側と折衝することは圧倒的に不利なので決して対等の立場とは言えない。

だが昨今の労組で問題視されているのはは、本来の目的とは異なる活動が増えたと(思われていると)いう点だ。「労働環境の改善」よりも、憲法改正や歴史認識についての問題に取り組んでいると思われている節がある。

景気が良くなれば労働条件が良くなり、景気が悪ければ労働条件が悪くなる。そんなことでは労組の影響力が失われるのは当然だし、本来の趣旨から逸脱しているようだと、組織の継続はおぼつかない。メーデーにはイベントが行われているが、特に若い世代を中心として動員は難しくなっている。組合活動が儀式化した取り組みとしか見えなくなりつつある。

労働者の権利を守ることは不可欠だ。しかし、今の労働組合という形でその目的が達成されないなら、違った形で達成されればよい。このままでは労組は衰退していく一方だという議論に、正面を切って反ばくできる人がどれだけいるのだろうか。(ZUU online 編集部)