衣浦トンネル
(写真=PIXTA)

愛知県道路公社が管理してきた有料道路8路線が民営化された。国家戦略特区を活用したもので、地方自治体が持つ有料道路の民営化は全国で初めて。インフラの効率的な運営だけでなく、新設予定のパーキングエリア内に大型施設や地場産品を使った飲食店誘致を計画するなど、狙いは地方創生にも向いている。

高速道路のサービスエリアや道の駅は民間活力の導入で地域の観光拠点に生まれ変わった。愛知県はそれを有料道路でも再現しようと目論んでいるわけだ。

ホテル誘致や新パーキングエリア建設も計画

民営化された有料道路は、愛知県知多半島を通る中部国際空港連絡道路(延長2.1km)、知多半島道路(20.9km)、知多横断道路(8.5km)、南知多道路(19.6km)、衣浦トンネル(1.7km)と、内陸部の名古屋瀬戸道路(2.3km)、猿投グリーンロード(13.1km)、衣浦豊田道路(4.3km)の計8本。総延長は72.5kmに及ぶ。

運営権を引き継いだのは、前田建設工業 <1824> 、森トラスト、大和ハウス工業 <1925> などが設立した特別目的会社の「愛知道路コンセッション」。施設を保有したまま道路の運営権を同社に売り渡すコンセッション方式が取られた。売却額は1377億円。最長30年間、道路管理や料金徴収業務などを担う。

同社は社内にパーキングエリアの魅力向上や地域連携を受け持つ部門を置き、将来の道路需要拡大に向けて地場産品を扱う飲食店や物販店を増やす一方、沿線の観光施設や宿泊施設、飲食店などの情報を網羅した冊子づくりを進める。

将来は知多半島道路に武豊北インターチェンジを新設するとともに、阿久比パーキングエリア近くに特産品を販売する大型施設を設ける計画が浮上している。沿線へのホテル誘致や、酪農が盛んな知多半島の特色を生かして牛ふんを用いたバイオガス発電事業も構想にある。

道路の維持管理はIT(情報技術)を活用して効率化を推進する方針。点検結果の帳簿類は過去にさかのぼってデータ化し、道路の不具合発生頻度を分析しやすくする。さらに、きめ細かい点検を進めるため、道路の振動などを感知するアプリ開発も考えているという。

愛知県半田市であった開通式には、山本幸三地方創生担当大臣も出席。「道路は公共が管理するという原則を打ち破った画期的な事業。全国に愛知方式として広げていくことが地方創生につながる」と期待の言葉を寄せた。

高速道路や道の駅の成功を有料道路へ

コンセッション方式は、2011年の民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI法)改正で、公共施設運営権が新たに創設されたことにより登場した。

民間の大胆で柔軟な発想で公共施設を運営することにより、収益力の向上や赤字体質の改善、新たな地域振興の拠点化を進めてもらおうという狙いが込められている。

空港で既に導入が始まっており、関西空港と伊丹空港はオリックス <8591> などが設立した「関西エアポート」が4月から、仙台空港は東京急行電鉄 <9005> 、豊田通商 <8015> などが出資した「仙台国際空港」が7月から運営を始めた。

このほか、新千歳空港、広島空港、高松空港、福岡空港などでも民営化の動きが出ている。多くがターミナルビルと空港を一体で運営し、赤字経営からの脱却を目指したもので、人が集まる空港を商業拠点とし、地域の発展に結びつけることも想定している。

空港民営化の効果が分かるのはまだ先のことだが、民間活力を導入した高速道路のサービスエリアや一般道路の道の駅は、観光施設や商業施設が次々に生まれ、地域の拠点となるところが出てきている。それを今回、有料道路に広げることで地方創生の有力手段の1つにしようと狙っているわけだ。

愛知道路コンセッション管理部は「既存パーキングエリアの改修と将来のパーキングエリア新設、大型施設の建設で通行台数の増加が十分に見込める」としている。