足かせは、主力事業の「総合スーパー」

スーパーマーケットやドラッグ・ファーマシーが好調な業績を残した一方、イオンの主力事業である総合スーパーは大苦戦。前年同期に87億1200万円だった営業損益は、183億1800万円まで赤字が大幅に拡大した。8月に記録的な台風の上陸により、客足が鈍り売り上げが伸び悩んだ。

その中で、売り上げの半数以上を占める食品は、前年同期比で売上高が1.1%減少。住宅余暇が同2.6%、衣料が同3.0%それぞれ減少となった。生活のために、削れない食料品の落ち込みは微減にとどまったが、住宅余暇や衣料には、節約マインドから買い控えの傾向がみられる。

さらに、これまで総合スーパーを訪れれば、食料品から衣料、家具まで一か所でショッピングを楽しむ客の姿が多くみられたが、景気の見通しがなかなか明るくならない状況で、消費者は価格や品質に敏感になり始めている。食料品は総合スーパーで購入するが、衣料品はユニクロやしまむら、家具ではニトリや IKEA など競合専門店に客を奪われ、太刀打ちできない。ディスカウントストアや金融部門でコツコツと積み上げた利益が、総合スーパーによって利食いされているのが現状だ。

子会社上場で利益を取り込めず

総合スーパーの不振の影響としてもう1つ挙げられるのが、2015年にイオンが完全子会社化したダイエーの存在がある。カリスマ経営者だった故中内功氏が創業したダイエーは72年に小売業で日本のトップに立ち、80年には売上高が小売業として初めて1兆円を突破するなど、時代をリードする存在だった。

しかし、その後の経営不振に陥り、産業再生機構の支援を受け、最終的にはイオンに取り込まれる形となった。子会社化が決定した当時は、ダイエーの店舗数を拡大し、2019年に売上高5000億円、営業利益150億円の目標を掲げた。ダイエーの88店舗をイオングループに移した際のシステム変更費用や、スーパーの販売促進のキーだった特売日が変わったことなどで客離れが進行。総合スーパー部門の営業利益を75億円押し下げる結果となり、再建が道半ばであることを伺わせる。

さらに、イオンの子会社を上場させる収益構造にも赤字拡大の要因が潜む。イオンは2017年2月期中間決算時で、301もの子会社を抱える。これまで経営の独自性を確保する目的で、イオンモール <8905> 、ミニストップ <9946> 、ウエルシアホールディングス <3141> などの子会社とともに親子で上場してきた。連結決算上では、子会社の利益は出資分のみ最終利益に計上でき、少数株主の利益が連結の純利益に反映できないため、グループ内に利益を取り込めない。子会社のディスカウントストアやドラッグストアが業績を伸ばしているが、決算上はその恩恵をすべて受けられているというわけではない。

先行きは強気の見通し

消費低迷に直面する小売業界では、高島屋 <8233> が業績の見通しを下方修正するなどの動きが出ているが、イオンは中間期で赤字が拡大したものの、17年2月期の通期見通しは純利益が前期比66%増の100億円に据え置き、強気の姿勢を崩していない。明るい材料を欠く日本経済の中で、新春に明るい結果が待っているのか、イオンの後半戦の勝負が始まる。(ZUU online 編集部)