リーマンショックも最初はヘッジファンドだった

そうは言っても、リスクに敏感なヘッジファンドが逃げたとなると、ほかのヘッジファンドが追随する可能性がある。

2008年9月、米証券大手リーマン・ブラザーズが破綻し、金融史に残るリーマンショックが起こった。これも、ヘッジファンドが資金を引き揚げはじめたことで、リーマン・ブラザーズの資金繰りが厳しくなり、株価がたたき売られたことが最終通牒となったという見方が強い。今回のドイツ銀行のパターンもリーマンショックと似てきたと意識せざるを得ない。

リーマンショック後に、サブプライムローンなどのデリバティブ等の流動性が一気に低下する連鎖によりクローズや窮地に陥ったヘッジファンドがあったことことは記憶に新しい。

ドイツ銀の株価はリーマンショック時を下回る

ドイツ銀行は2015年の決算で約67億ユーロ(約7800億円)の赤字を計上している。欧州経済危機、VWショックなどで、ドイツ最大の銀行として国のために多額の融資を行わざるを得なかったことも経営危機の原因だと言われている。

2015年の年次報告書によると、デリバティブに対するエクスポージャーは約41兆ユーロ(約4700兆円)の巨額の残高を抱えていることが判っている。これはデリバティブの想定元本ベースであり、数字が示すほど大きなものではないが、この取引の中には、財政破綻懸念の強いギリシャ、イタリアへの債権などが含まれており、不良債権化するリスクはあるだろう。

リーマンショック時に流動性の低いサブプライムローンなどを組み入れたデリバティブが、最終的にリーマンを破綻に追い込んだ。ドイツ銀行のデリバティブ残高には、他の投資銀行よりも流動性の低いハイブリッド債などが多く含まれているという。

そういった背景から、ドイツ銀行の株価は、9月30日安値で9.898ユーロと10ユーロ割れまで売り込まれた。年初来の下落率は56%に達し、リーマンショック時の安値をすでに割り込んでいる。ただ何かあったとしてもドイツ銀行は、大きすぎてつぶせないのと言う見方も根強い。

追い打ちをかけた米司法省の罰金

9月16日に、米司法省は住宅ローン担保証券(MBS)の不正販売をめぐり、ドイツ銀行に140億ドル(約1兆4400億円)の和解金(罰金)支払いを要求したと報じられた。当日のドイツ銀行の株価は約8%の下落となった。その下げが、9月29日の「資金引き揚げ」による下げにつながったのだ。

ただ、その翌9月30日、ロイターがドイツ銀行の罰金は大幅削減の54億ドル(約5500億円)で近く合意かと報じ、株価は30日を底に一旦反発に入った。

ヘッジファンド界のカリスマ、ジョージ・ソロス氏は、ドイツ当局への報告でドイツ銀行株を6月時点で約700万株をカラ売りしていたことが判明している。その後のポジションを買い戻しているのか、継続してショートなのかは今のところ判らない。これからもドイツ銀行をめぐるニュースと株価の動きは世界の金融市場を揺さぶる可能性が高そうだ。(ZUU online編集部)

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