M&A
(写真=PIXTA)

M&Aは企業のシェア拡大、売上・利益増大を図るため、今や当たり前の手段だ。それはなぜか。M&Aにより事業拡大がうまく進むのが一般的になっているからだろうか。実は、M&Aにより事業拡大を遂げたケースがある一方、上手く軌道に乗せることができなかったケースもある。こうした事例について過去の大企業のM&Aから学んでいこう。学ぶことでどうして成功したのか、失敗したのはなぜか理由をつかむことができれば、自身のM&A成功に活かすことができるようになるだろう。

M&Aはほとんど失敗に終わってる?

M&Aにより日本企業が事業拡大を可能にした、成功したというケースは、一部新聞報道では2割と少ない。日本企業が海外企業とM&Aを行う場合の成功率は5%と示す専門家もいる。その一方で、M&A後の株価などを分析すると5割程度は成功しているといった評価をくだす専門家もいる。

ここから言えるのは、M&Aにより何を成功とするか、その糸口をどこに置くかによって回答が変わってくることだ。日本企業同士なのか、日本企業が海外の企業をM&Aをするのか、短期間で見た場合か、長期間で見た場合かで評価は異なってくるのだ。

ただ一つ言えることは、5~50%という数字を見ると、M&Aは少なくとも半分は上手くいかず、評価によってはほとんど失敗に終わっているということだ。M&Aをすれば事業拡大ができるというのは絵に描いた餅で、現実はそう甘くないのだ。

大企業のM&A成功事例

とはいえ、実際にM&Aにより市場を大きく勝ち取ったケースも存在する。大企業のM&A成功事例からヒントが得られないか見ていこう。

JTのM&A事例を検証していこう。JTは1999年にアメリカのRJRIを買収し、従来の約10倍となるたばこ販売本数を、海外市場で獲得することに成功している。これにより積極的なマーケティング投資によるブランド強化を行い、パッケージの配色やデザインを統一し、世界での知名度を上げられるようになった。また、欧米流と日本流を融合させた企業体の実現を可能とした。リストラやコスト削減ではなく、ブランド育成に力を注いだ点が、その後の世界戦略への布石となったことはJTにとって大きかっただろう。

2007年のGallaher買収時には経験値の向上により、わずか100日間で統合準備を終えている。この時には買収後に従業員の個別面談を行い、給与・賞与体系の統一化を図ったことが、モチベーション維持につながっている。また、社員用語の統一を実施し、円滑なコミュニケーションを実現したことが多国籍の従業員の意思疎通に一役買い、成功の一因になったといえる。こうした買収を経て、JTは世界におけるたばこ産業の一大メーカーを築き上げたのだ。

もう一つ、日本電産のケースも紹介しよう。日本電産は、買収した赤字の企業をすべて黒字化するというM&A大成功の事例だ。

日本電産の買収後の基本方針は以下の3つだ。まずは経営者も従業員も代えないで、一緒に経営を行うこと。2つ目は買収する会社のブランドを残し、安心感を与えること。最後に、再建後には支援のための人員を引き揚げ、もとの経営と同じにすることだ。こうした方針が買収された側の従業員に安心感を与え、日本電産グループとして頑張っていこうという思いにつながるのだろう。それが黒字化の源となっているようだ。

この他、M&Aを行う企業を戦略的、合理的に絞り、将来性のある部分に的を絞っていることも成功している理由といえる。