1970年代に米研究者の頭脳を集結して考案された「最強の監視プログラム」が、デビットカードと酷似していたという興味深い事実が判明した。

消費者にとっては利便性の高いデビットカードの発行枚数は昨年1年間だけで20億万枚を突破。個人情報から嗜好、日常的な行動パターン、交流関係まで、すべてが即座に明るみにでるという点で、確かにこれ以上完璧な諜報ツールはないだろう。

電子決済が普及していなかった45年前から、可能性と危険性を察知

この考案は1971年、「KGB(ソ連国家保安委員会/1991年のソ連連邦崩壊まで活動後、ロシア連邦保安庁に権限を移行)の依頼によって、国民に気づかれることなく動向を監視するシステムを開発する」という仮定に基づき、研究者から回答を募るという試みから飛びだした。

当時の背景を考えれば、盗聴器や盗撮器などが回答として寄せられて当然だったにも関わらず、研究グループがたどり着いた究極の監視法は、現代のデビットカードとそっくりの電子決済システムだった。

「監視」という言葉から最もかけ離れた存在のような印象を与えるデビットカードだが、よくよく考えてみれば、「いつ・どこで・何に・いくら使ったか」という情報が即座に記録される非常に優秀な情報回収ツールであることに気づく。銀行口座などともリンクさせているので、金融情報の漏えいどころではない。利用するたびに全情報が記録されているのだ。

つまりデビットカード利用者のデータから大まかな統計をとるほか、特定の人物の動向を探ることも可能ということだ。同様のことがクレジットカードを含むほかのEFTS(電子式資金移動システム)にも該当するが、使用頻度という観点からデビットカードほど密着したデータは弾きだされないだろう。ナスダックのデータによると、2015年にはVisaが約15億万枚、マスターカードが約7億万枚のデビットカードを発行している。取引金額は2012年の時点で47兆ドル(約4889兆4100億円)とけた違いのスケールだ。

米コンピューター科学者、ポール・アーマー氏は考案に協力した4年後、関連記事を掲載した米科学雑誌の取材に応じ、単独のインターネットアクセスやデビットカードが存在しない初期デジタル時代から、すでにEFTSの様々な可能性や危険性を察知していたと語った。

キャッシュレス社会の利便性が強調される裏側で、国民の動向を静かに監視するシステムが構成されていると想像するだけで、デビットカードの利用にためらいが生じるが、人間というものは基本的に利便性を優先させてしまう生き物だ。少なくとも当分の間、デビットカードの需要の勢いに歯止めがかかることはないだろう。(ZUU online 編集部)

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