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(写真=PIXTA)

為替相場の変動に着目して資産を増やそうとする人の中にも、「FXでレバレッジをかけて投資するのはちょっと……」という人は少なくない。そこで外貨預金を考えることになるわけだが、中にはFXのレバレッジなしで運用しているケースもある。

FXは投機性が高いことで知られているものの、レバレッジなしであれば、外貨預金と大きな差がないとの見方からだ。実際、両者に大きな違いはないのだろうか。そして、どちらが有利に運用ができるのか考えてみたい。

レバレッジはテコの原理

FXとは外国為替証拠(保証)金取引。商品取引や株式市場の信用取引のように、証拠金を拠出して決められた範囲内で元手よりも大きい金額で取引を行なう。

たとえば、10万円の証拠金を入れて20万円分買うと、10万円のものが15万円に値上がりした場合、手持ちの10万円の資金だけなら5万円の利益となる。20万円分買っていれば2倍の10万円の利益を得ることができる。効率的に資金を増やすことが可能になるのだ。

当然のことながら逆の場合もある。10万円のものが5万円に値下がりすると手持ち資金で買った場合は半分の5万円は残る。20万円だと10万円の損失。これを証拠金で穴埋めするため、すべての資金を失ってしまう。このようにFXでレバレッジを掛けすぎると、ハイリスク・ハイリターンの取引となる。

レバレッジというのは、上の例引で言えば、2倍がそれに該当する。いわゆる“テコの原理”で、3倍、5倍、10倍とレバレッジを大きくしていけば、読みが当たれば利益も大きい半面、外れると損失も3倍、5倍と大きくなるなど、FXの投機性を高める源と言っていいだろう。

レバレッジなしは1倍であることから、手持ち資金でそのまま取引することを意味する。株式投資における現物取引を思い浮かべればわかりやすい。米ドルやユーロなど取引する通貨を株式の銘柄に置き換えて考え、たとえば、1ドル100円の時に100ドル買い、円が安くなって1ドル110円になった時、計算上で1000円の利益が生じる。海外旅行で行きに現地通貨に両替し、帰国後に余った通貨を円に再両替した時に為替相場が激変していた時、「得した」「損した」と感覚は同じとみていい。

以上のことから、レバレッジなし(1倍)のFXをひと言でいうと、手持ち資金で為替差益を狙う取引となる。

外貨預金も為替変動で損益が決まる

一方の外貨預金だが、日本の低金利を嫌って活用する人が多い。ほとんど利息がつかない国内の預貯金とは違い、国によっては数%の利息がつくため、資産を増やすのに格好の金融商品と目に映るからだ。

ただし、FXと同様、為替変動によって元本も変動し、預けた国の通貨が対円で下がった時は、元本に損失が発生する。日本国内では考えられない5%の利息が貰えても、通貨が10%下落した場合、単純に計算すると差し引きで5%の損が生じるのだ。為替相場が円安の時は良いが、直近1年間のように円高が進むと運用結果は厳しい。

「為替変動のリスクがあるのが同じなら、利息が貰える分、外貨預金の方が有利ではないか」──そう思われるかもしれない。

しかし、FXの場合も低金利の通貨を売って高金利の通貨を買えば、スワップ金利をもらえるのだ。反対のケースでは支払わなければならなくなるが、日本の金利は世界的に最低水準にあるため、その心配はしないでもいいだろう。この点を踏まえれば、FXレバレッジなしと外貨預金は大差はないかもしれない。

とはいえ先進国は低金利のところが多く、日本だけ金利が低かった時代と比べればスワップ金利にはあまり期待できないのが現状だ。

FXレバレッジなしはフレキシブルな対応が可能

両者はどこが違うのか、資産運用としてどちらが有利なのか考えてみよう。

取り扱い金融機関だが、FXは専門業者や証券会社、外貨預金は銀行。FXは業者によって異なるが通貨のバリエーションが豊富。外貨預金は一般的にメジャーな通貨に限られる。

利息は、外貨預金が解約時や満期受け取りなのに対し、FXのスワップ金利は毎日受け取れるのが特徴だ。

取引レートは、FXはリアルタイムで、外貨預金では1日あたり1回となっている。また外貨預金には満期があるが、FXにはない。レバレッジを効かせれば、リスクがその分大きくなることからFXは長期運用の対象になりえないながら、レバレッジなしならその限りではないだろう。

ただFXであれば売り買いの両方ができるため、対円で値下がりするとみた場合、その通貨を売れば利益確保のチャンスが生じるし、外貨預金は国内金融機関の預貯金などとは異なり、預金保護制度の対象外となることは覚えておきたい。

とはいえ、リアルタイムで刻々と価格が変わることを好まない人もいるだろう。満期がしっかり来るほうが管理もしやすいという考え方もある。FXはたしかにドルやユーロだけでなく、新興国の通貨での取引も可能だが、期待リターンが高い商品は想定リスクが高くなることも覚えておきたい。いずれにしても、自分の投資スタイルや考え方に合った商品を選べばいいだけのことだ。

FXにせよ外貨預金にせよ、為替変動で損益が生じる。このことを十分理解した上で利活用すべき運用対象であることを忘れないでおきたい。(ZUU online 編集部)