おとり物件,不動産,不動産業界,業界団体
(写真=PIXTA)

インターネット上で賃貸物件を探す人が増える一方、契約済みや架空の物件情報を掲載する「おとり広告」が後を絶たないと問題になっている。その多くは賃貸物件で、築年数や面積のごまかしに加え、集客目的の架空の物件を故意に出す例もある。

おとり広告は、おとり広告を見て集まる客に対し、その物件はすでに貸してしまったなどと称して、他の物件を紹介して押しつけることになるので、宅建業法32条及び不動産の表示に関する公正競争規約(表示規約)21条によって禁止されている。

消費者庁は今春、業界の自主規制団体「不動産公正取引協議会連合会」に対し、不動産のおとり広告に関する表示の取締り強化を要請した。問題となっている「おとり広告の物件=おとり物件」とはどのようなものなのか、また、どのような対策が取られているのか、今回は「おとり物件」の現状を探る。

宅建業法32条:誇大広告の禁止

宅建業法32条によれば、宅建業者が広告をするときは、(1)著しく事実に相違する表示、及び(2)実際のものよりも著しく優良もしくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。

広告で賃貸すると表示した物件と、現実に賃貸しようとする物件とが異なるので、大きく事実と相違し、誇大広告に他ならない。すでに契約済みで取引できなくなった物件を、そのままインターネットに広告表示を続けることは、貸すことのできない物件について広告をすることになり、おとり広告として禁じられている。

おとり広告をした宅建業者は、指示、業務停止、情状が特に重いときは免許取消しの処分、更に、6か月以下の懲役又は100万円以下の罰金を受けることがある。国土交通省ネガティブ情報等検索システムでは、参考情報として、都道府県知事が行った監督処分情報を社名とともに5年間公開しているが、東京都知事の「おとり広告」に関する監督処分は、指示1社と業務停止2社にとどまり、明らかな虚偽の立証が難しいために監督処分に至らない業者の存在が懸念される。

公正競争規約第21条:取引できない物件の広告禁止

広告に関して、実際の商品よりも優良であると見せる表示(優良誤認表示)は、景品表示法第4条で禁止されている。公正競争規約は、景品表示法上の規定に基づき、消費者庁・公正取引委員会の管轄下にある不動産公正取引協議会が自主的に定めたものであり、下記のおとり広告は規約違反である。

(1)物件が存在しないため、実際には取引することができない物件(架空情報など)
(2)物件は存在するが、実際には取引の対象となり得ない物件(契約済、未退去など)
(3)物件は存在するが、実際には取引する意思がない物件(反響があっても長期間未決定など)

不動産公正取引協議会ではこの公正競争規約にのっとり、広告に虚偽内容があれば会社に厳重警告を出し、50万円以下の違約金を徴収し、悪質なケースは消費者庁や国交省に通報する。景品表示法の措置命令に従わないときは、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金などの罰則を受けることがある。

また首都圏不動産公正取引協議会では、毎月発行の「公取協通信」でその措置を公表している。過去半年間を調べると、31業者に対して措置が公表されていた。10月号に公表された6業者の中で最も悪質な業者は、取引の意思がない「おとり広告」が6件。

代表者は「業者間情報図面を基に新規に情報公開したが、その直後に同図面をすべて処分した。」と語り、そのうち3物件は本来6.8万円のところ4.6万円など実際の賃料よりも著しく安い賃料で広告したほか、ルームシェア物件であるのに単独使用が可能な物件であるかのように表示した物件もあった。

強化される「おとり物件」対策

消費者の利益を損ない、不動産業界全体への信頼を失わせる「おとり物件」に対して、不動産業界も厳正に対処する傾向が強まっている。

上述の首都圏不動産公正取引協議会では、不動産関連の主要なポータル5サイト(アットホーム、CHINTAI、HOME’S、マイナビ賃貸、SUUMO)をメンバーとする「ポータルサイト広告適正化部会」を設置し、(1)メンバー間で違反物件情報等を共有、(2)その情報にかかる物件の掲載削除、などの対応をしている。

2015年度は年間3619物件もの違反物件が共有され、メンバーのポータル5サイトから速やかに削除されたほか、不動産事業者が自発的に広告を取り下げたケースもあったと言う。協議会は、重ねて違反をする業者に対しては、適正な広告を行うように「改善要望書」を送付している。

また空室状況をEメールアドレスのみ入力して問い合わせするだけで素早く確認できる不動産情報サイト「アキベヤ」が9月にオープンした。今後の利用者数の動向が興味深い。

消費者の「おとり物件」に関するコメントには、「インターネット広告におとり物件はつきもの、嘘の無い業者に会えたら幸運」というような意味合いのものが多く見られる。これこそ不動産業界とインターネット広告への信頼が失墜している証である。

集客はビジネスの要だが、嘘やルール無視は結局信頼を損ね、自分で自分の首を絞めることに他ならない。正しい情報発信は当然のことであるが、情報登録日、次回の更新予定日などを明確に表示するなど物件情報の誠実な管理の徹底が、信頼の回復につながるのではないだろうか。(ZUU online 編集部)

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