欧州最大の国際事業国、英国のEU離脱にあたり、地域事業の活性化に焦点を置いた「国際ビジネス・ビザ」を設ける法案を、プライス・ウォーター・ハウスクーパース(PwC)が提出した。
Brexitによる影響への懸念が高まる中、海外の企業が事業を展開しやすく、海外からの労働者が労働しやすい環境を提供し続けることで、「大英帝国」への帰還ではなく「国際帝国」への進化を促進するというポジティブな発想だが、取得条件はなかなか厳しそうだ。
従来の就労ビザや技術能力者ビザと大差はなさそう?
英国が欧州一の国際事業国の座にのぼりつめた背景には、EUという巨大な集合市場へのアクセス権が影響しているという事実は否定できない。それゆえに英国で事業を営む国内・海外の企業にとって、EUとの決別を不吉な船出と受けとめる傾向が強い。
特にニューヨークと並ぶ世界屈指の金融都市として君臨している首都ロンドンが、パリやベルリンといったほかの欧州都市に王座をうわばれる可能性は打ち消せない。バークレイズやHSBCホールディングスのように、「ロンドンの金融システムを短期間で移動させるのは非現実的」「Brexitが新たな事業チャンスを創出する」とのポジティブな見解もある反面、EU市場へのアクセス権や労働力の確保など解決すべき様々な問題が山積みである。
PwCの法案はこうした先行きの不透明さを払拭し、正式な離脱交渉開始後も英経済を促進・安定させる手段として打ちだされた。この法案では地域ごとに発展している事業を重視し、EU離脱後は英国から離れざるを得ないEU圏の労働者に新たなビザを発行することで、労働力を確保しようという意図だ。それと同時に、地域産業の発展に本当に必要な技術者のみを積極的に受けいれる機会も創出する。
しかし基本的には長年非EU圏の労働者に発行されてきた就労ビザや技術能力者ビザと同様の取得条件が課されるようで、EUの労働者を継続、あるいは新たに雇用する企業には、「英国人・非英国人問わず、英国内で労働する権利をもった雇用力が確保できない場合にのみ」、国際事業ビザの発行される可能性が高い。
つまり国際事業ビザ法案が通過したとしても、雇用口獲得の優先権は自動的に英国人や労働許可を取得済みの非英国人に与えられる。これまで英国人とほぼ同等の権利が与えられていたEU圏からの移民は、労働許可を取得していない非英国人と同じスタート地点に立たされるということになる。
現在ロンドンの金融企業で働く労働者の3分の1は海外出身だが、そのうち12%がEU圏出身で何のビザも取得しておらず、Brexit後は帰国、あるいはほかのEU圏に移動する必要が生じると予測されている。いったいどれほどの割合が国際事業ビザの恩恵を受けられるのだろうか。(ZUU online 編集部)
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