経済学賞と他のノーベル賞と違う点は?

経済学賞は他のノーベル賞とは一線を画すものの、基本的にはノーベル賞と同様の基準に準拠されている。つまり、経済学分野において傑出した重要研究を達成した者に授与されることになっているのだ。異なるのは、賞金の「拠出元」である。

ノーベル賞受賞者に対して、現在では800万クローナが賞金として渡されることになっている。これは今のレート(1クローナ=約11.648円)で言うと約9300万円である。この賞金をノーベル賞受賞者はノーベル基金から拠出される。一方、経済学賞の場合はスウェーデン国立銀行が拠出する決まりになっている。これはノーベル自身がノーベル賞としては認めていないからだ。

なお、その他は基本的に同じだ。準拠する基準もセレモニーも同じに行われる。また受賞者上限数等も同様である。けれども、賞金の拠出元だけが異なっている。これによってどのような問題が出るのか、次に確認してみるとしよう。

経済学賞の賞金だけ課税対象

ノーベル賞の賞金は基本的に「非課税対象」である。これは所得税法第9条の非課税所得に記載されている。非課税所得として認められている賞金には、ノーベル賞以外にはオリンピックの賞金などだ。

ただし、同法には「ノーベル基金を拠出元とする賞金」という旨が記載されており、「スウェーデン国立銀行」の文言は一文字もない。つまり、経済学賞だけは「課税対象」であると見解がなされているのだ。

賞金は原則として一時所得だ。特別な規定がない限りは所得税が課税される決まりになっている。現在の所得税法に準拠するのであれば、経済学賞だけが所得税の対象となると言えるだろう。

なお、仮に所得税が課税されるとしたら最高税率の「45%」が課税されることになるだろう。単純な計算だが約3700万円程度が課税されるものだと考えられる。賞金のうち、約4割を税金として徴収される計算になるといえるだろう。

ノーベル経済学賞受賞者は「0人」

ノーベル経済学賞の賞金は課税対象として扱われる。だが、残念なことに日本人のノーベル経済学賞受賞者はまだ現れていない。そのため、今まで経済学賞の賞金による課税が実施されてことがない。

ノーベル経済学賞は圧倒的に欧米が強く、今年はオリバー・ハート氏とベント・ホルムストローム氏の2人が経済学賞を受賞した。彼らが提唱した契約理論が経済学の発展に貢献したからだ。

また過去を遡って確認してみても、アメリカを中心としてヨーロッパの経済学者が受賞していることが分かる。決して日本人が劣っている訳ではないが、それほどまでに欧米の経済学が強いのだ。

このようにまだノーベル経済学賞は非課税対象ではないが、今まで受賞者が出ていないために話題になっていない現状がある。もし今後、ノーベル経済学賞において受賞者が現れたら、経済学賞に課税するかしないかで議論が巻き起こることだろう。

ノーベル経済学賞は一般的にはノーベル賞の1つとして考えられている。だが、他のノーベル賞とは賞金の拠出元が異なる。その結果、経済学賞にだけは所得税が課税されることになっているのだ。今はまだ経済学分野において受賞者は現れていないが、将来的には日本人経済学者が受賞することを期待したい。(ZUU online 編集部)