過労死,損害賠償,解決金,賠償金,課税,非課税
(写真=PIXTA)

長時間労働による過労死のニュースが最近報道された。心を痛めるニュースであるが、残念ながら今回が初めてではない。長時間労働の結果うつ病にかかり自殺したケースの裁判事例(電通事件)、ワタミの過労自死事件の損害賠償請求訴訟などが起きている。

このような場合、遺族による訴訟による損害賠償金は「法的義務に基づく損害賠償」であり「心身に加えられた損害につき支払いを受ける慰謝料その他の損害賠償金」に該当する。遺族にとっては損害賠償金なんていらない思いも強いだろうが、この賠償金には課税されるのだろうか。

ケースによって異なる

結論からいうと、今回の場合の賠償金は非課税所得となり税金はかからない。とはいえ、示談金、和解金、損害賠償金と一言でいっても、内容により課税されるものとされないものとがあるので、あらためてそれぞれのケースを確認する必要がある。

一般的に紛争が生じた際に、訴訟等の和解に基づき「解決金」の名目で現金を受領することがある。受領した現金の性質により、非課税所得に該当するのか、10の所得区分のいずれかに該当するか、判断される。

参考までに10の所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で、労務その他の役務または資産の譲渡の対価としての性質を有しないもの――とされている。

例えば、通事故や暴行などにより心身に加えられた損害の示談金をもらった場合。
具体的には治療費や慰謝料、働けないことによる収入補償に関する示談金を受領しても、非課税所得となり税金はかからない。

また被害者死亡に対する損害の示談金を、遺族が受け取っても所得税、相続税はかからないし、遺族の精神的苦痛に関する示談金も、非課税所得なり税金はかからない。

しかし、示談の成立などで示談金を受け取る権利が一旦確定した後に、被害者が亡くなった場合には、示談金を受け取る権利が相続財産となり、相続税の対象となってしまう。また事故などにより車両の修繕が必要になった場合の損害賠償金も課税されない。

例えば、時間外労働時間の給与請求をした場合の解決金の場合。こちらは、当然会社にいたら給与所得として発生している所得なるため、当然課税される。

また、マンションの建物の躯体(く体)に大規模な瑕疵があることが発見した場合。少し専門的に、裁判の流れからこのケースをみてみよう。

最初は損害賠償金として非課税所得して税金がかからないと思っていたが、以下の流れにより一時所得として課税されるケースがあった。

登場するのはA社(建設会社)とマンションの管理組合。両者の間で、団地の各建物の瑕疵問題の解決のために和解契約及び確認書が締結されていた。これに基づく解決金を受領した場合でも、A社が住宅の瑕疵について不法行為責任も瑕疵担保責任も負うものではなく、法的義務に基づく損害賠償としての慰謝料などではないことを明示して支払っている。

このケースでは、「心身に加えられた損害につき支払いを受ける慰謝料その他の損害賠償金」に該当するものではない」とされ、「不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金」に該当するのもではないのだ。そして「資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金」ともいえないということだった。

繰り返しとなるが、示談金や和解金、賠償金でも、課税-非課税があるので、注意したい。
眞喜屋朱里(税理士、眞喜屋朱里税理士事務所代表) この筆者の記事一覧

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