国会議員が政治資金パーティーで白紙の領収書を受け取り、金額などを書き込んでいた問題で、高市早苗総務相は2016年10月7日の閣議後の記者会見で、自身が主催したパーティーでも出席議員に白紙の領収書を渡し、「記載を相手に了解したこともある」と述べた。

しかし実はこれは問題だ。もし日ごろ白紙領収書を見ることがあるという方は注意していただきたい。なぜなのか解説しよう。

白紙領収書はなぜ問題なのか

領収書は、法律上の証拠書類である。発行者以外の誰かが勝手に記入したり、書き換えたりすると実は「文書偽造」(私文書偽造、刑法159条)という刑法違反の罪になるということになるのである。

税務調査で発覚するかどうかはともかく、仮に本当に支払った金額を記入したとしても、罪になるのだ。税務調査でおいて犯罪に問われるか否かは別として、まず重加算税が課される。重加算税とは、仮装や隠ぺいの事実があるときに課される追加課税であり通常の税率に比べて非常に高い。

白紙領収書の上書きは刑法だけでなく税法上でも罪になるということだ。

事実を自分で書いただけでもダメなのか?

白紙領収書を渡され、自分で金額や日付などを真実に合わせて上書きした場合はどうなるのであろうか。

その場合は罪にならない。白紙領収書の場合は、それが公の手続きの中で使われるものであったとしても、金額欄や日付といった支払いの事実が真実に合致していればよい。名義人の記載欄については名義人によってみずから記載されているので、少なくとも刑法上は偽造という問題は生じない。

白紙で出したほうはとがめられないのか?

一般的に、経費を水増しするために白紙の領収書を受け取った側が実際に支払った金額よりも多い金額を書くという不正がクローズアップされがちだ。ではその逆に、発行した場合は、どうなのであろうか。

取引先から白紙の領収書を発行してくれと頼まれたら、断りづらいかもしれないが、必ず断らなければならない。文書偽造した側よりも、重い罪に問われることもあるのだ。

金額欄に何も記載されていない領収書を取引先に大量に渡し、脱税を手助けしたとして、法人税法違反幇助(ほうじょ)の罪に問われた会社役員に対し、懲役6カ月、執行猶予3年の量刑が課せられた判例があるほどだ。

当然、脱税に悪用される可能性は当然認識してるにもかかわらず、脱税を助けたということに対する罪を受けての刑罰に問われるのである。

冒頭の高市総務相の場合は、渡した相手が事実を書いていれば渡した相手は問題ないし、その場合、渡した高市総務相側も罪に問われることはないだろう。

領収書の役割とは?

ここで、本来の領収書の役割について改めて見直してみよう。

領収書とは、品物やサービスの代金を支払ったことを証明するもの、支払った代金を再度請求されることを防ぐためのものである。

そして、領収書がきちんと効力を示すためには、金額の前に「¥」を金額の後に「-」を書くこと、5万円以上の領収書には「印紙」が必要、印紙の所に「割印」を押すなどの規定が存在していること――も知っておく必要がある。

印紙をはる必要があるのは、課税文書に当たる書類には税法上、印紙税が課税されるためだ。しかし印紙税法および租税特別措置法の一部が改正され、2014年4月1日以降、受取金額が5万円未満のものについて非課税となり、印紙は不要となった。

領収書に何気なく貼ってある収入印紙は、売上代金を受け取った証明書になる文書にはらなくてはいけないものである。

領収書を発行する場合は、収入印紙を張らないと収入印紙税の脱税にあたることも留意する必要がある。発行する側も受け取る側も、5万円以上の領収書を受け取るときは気をつけて見てみよう。

眞喜屋朱里(税理士、眞喜屋朱里税理士事務所代表)

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