熟年離婚率の上昇にともない、経済的な窮地に陥る高齢者が米国で急増しているという。この傾向は主に女性に強く見られ、既婚中は夫の給与や資産に依存していたために貯蓄やキャリアからかけ離れた生活を送っており、高齢を迎えてから最低賃金などで何とか生計を立てるというパターン。米国で働く高齢者が増えている背景には、こうした熟年離婚の増加も関係しているようだ。

熟年離婚者の貧困率は既婚者の6倍

離婚大国世界10位の米国。総体的な離婚率は59%(2014年国連統計局調べ)だが、ボーリング・グリーン州立大学のデータによると、1990年から2010年にかけて50歳以下の離婚件数が減ったのとは対照的に、50歳以上の熟年離婚が2倍に増えたという。

そして熟年離婚の増加が、高齢女性を社会復帰に押し流しているとの見方がで始めた。結婚後も地道にキャリアの道を歩んできた女性ならば経済的不安は少ないだろうが、ベビーブーマー(52歳以上)世代の女性の多くは「結婚=家庭を守る」という人生を歩んできた。

現実的に見て、新たなキャリアに飛びこむには50歳という年齢は大きな障害になる。その結果、「一家の稼ぎ手」と決別後の人生に経済的な負担が待ち受けているというわけだ。62歳の既婚者の貧困率はわずか3.2%だが、熟年離婚者の貧困率は19%に達している。

ボストンカレッジのエコノミスト、クラウディア・オリベッティ氏とマセマティカ・ポリシー・リサーチのダナ・ロイズ氏が5万6000人の女性を対象に実施した調査では、30歳以前に離婚した女性よりも50歳を超えてから離婚した女性のほうが、高齢(50歳から74歳)になっても長時間労働をせざるを得ない確率が10%高くなることが判明している。

若いうちに離婚してしまえば、幼い子供をかかえて子育てや経済面で苦労しつつも、キャリアを積みなおす時間や機会に恵まれやすい。バツイチ、子持ちをほとんど気にしない欧米では、新しいパートナーに巡り合える可能性も非常に高い。むしろバツイチのまま一生独身ですごす方が珍しいとなれば、新たな家庭と経済基盤を築くことも容易くなる。

しかし50歳をすぎてから新たな人生を築こうとしても、確固たる自らの経済基盤がないかぎり道のりは相当厳しくなる。「私はいい奥さんだから」などと妻の座にあぐらをかいていると、ある日突然職探しに慌てる事態に陥らないとは断言できない。日ごろから貯蓄はもちろん、万が一に備えてキャリアのアンテナを張りめぐらしておくことが、これからの女性には不可欠かも知れない。

いずれにせよ米国でも高齢者が905万人(2016年米労働組合調べ)に達した現在、熟年離婚がそれに拍車をかけていることは否定できない事実のようだ。(ZUU online 編集部)

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