米雇用統計,米大統領選
(写真=Thinkstock/Getty Images)

投資家の関心は来週8日の大統領選挙に集まっており、通常であれば注目度の高い米雇用統計も、今回に限っては市場への影響が限定的となる可能性がある。

だが、ウォール街の市場関係者からは「トランプ・リスクを回避したとしても、景気の見通しはおぼつかない」との意見も聞かれる。景気回復が全般的に力強さを欠いていることに不安を抱く市場関係者は少なくない。大統領選挙で民主党のクリントン候補が勝利すれば、それですべての不安が払しょくされると考えるのは短絡に過ぎるだろう。

そこで今回は、間もなく発表される10月の米雇用統計のポイントを整理したい。

実は堅調ではない労働市場、LMCIは悪化を示唆

10月の雇用統計は、雇用者数が17万5000人増、失業率は4.9%が予想されている。雇用者数は9月までの3カ月間で月平均19万2000人増と約20万人ペースで増加しており、失業率も5.0%以下で推移していることから、足もとまでの雇用情勢は「堅調」との見方が一般的だ。10月も予想通りの数字となれば、堅調な状態を維持していると受け止められるかもしれない。

だが、より包括的に労働市場を捉えると、「堅調」とも言い切れない。

FRB(米連邦準備理事会)は、雇用者数や失業率のみでは労働市場の状況を十分に把握することは難しいと考え、金融政策の判断材料として19の労働市場に関連する指標で構成した「LMCI(労働市場情勢指数)」を独自に作成し、公表している。

このLMCIが今年に入り基準となるゼロを超えたのは8月の一度きりである。2014年のLMCIの平均値はプラス5.5、2015年がプラス2.1だったのに対し、2016年1〜9月期はマイナス1.7となっている。このことから、労働市場は趨勢的に悪化が続いていると見ることもできる。

実際問題として過去の数字を見ると、LMCIがマイナスになるとおおむね半年から1年後にリセッションに突入している。米景気はいつ後退してもおかしくない状況にあると言えるだろう。

LMCIは雇用統計の翌営業日、今月であれば7日に発表が予定されている。雇用統計と合わせて確認することで、景気の方向性をより正確に把握することができるだろう。

雇用者数の増勢鈍化、方向性に加えスピードにも注目

雇用者数の増勢が長期トレンドで鈍化していることも気がかりだ。雇用者数の増加を月平均でみると2014年が25万1000人、2015年が22万9000人だったのに対し、今年1〜9月期は17万8000人となっており、雇用者数の増加は時間の経過とともに減少している。

一般に、景気後退の目安は3カ月平均での雇用減少とされており、現時点で景気後退を懸念する状況にはない。しかし、趨勢的に増勢が鈍化していることから、このままではいずれ減少に転じることになりかねない。増勢鈍化に歯止めがかかるのか、継続するのか? 継続する場合はそのスピードにも注意することで、将来的な景気後退との距離感を把握したい。