金融市場の動き,マイナス金利政策
(写真=PIXTA)

要旨

◆トピック

日銀は9月の枠組み変更で長期戦に対応できる体制を整えた。やみくもに金融緩和を強化していくのではなく、適切なイールドカーブを実現することによって、物価目標達成を待つという道筋を描いている。逆に言えば、これまでのように日銀が主体的に動いて、物価目標達成を目指すことがもはや困難になったため、金融緩和を続けながら追い風を待つしかなくなったと言える。

今月の決定会合でも、追加緩和はあっさりと見送り、先行きの追加緩和を強く示唆することも無かった。そうした中で、今後の注目点としては、「長期金利の制御をうまく続けられるか?」、「国債買入れの減額はいつからか?その際に市場の過剰反応を抑えられるか?」、「追加緩和はあるか?」という点が挙げられる。

そもそも、2%という物価目標はわが国にとって非常に高いハードルだ。1980年以降で2%を超えていたのは限られた期間であり、しかも原油価格の急騰やバブルなど特殊要因が働いていた時期ばかりだ。2%の達成には少なくとも数年はかかる可能性が高い。

物価目標を達成できない状況が今後延々と続くことが見込まれる中、日銀は長期金利をうまく制御し続けなければならないほか、国債買入れも市場の混乱を招くことなく減額していかなければならない。また、必要と判断されるタイミングでは、限りある追加緩和を適切に実施することも求められる。

物価目標達成時期の後ろ倒しは今後も相次ぐと見込まれるが、いかに失望や批判を回避し、市場や人々の期待を繋ぎ続けるかという点も課題となる。日銀の苦境はまだまだ続きそうだ。

◆金融市場

10月は円安ドル高が進行、長期金利は横ばいであった。今後は、米大統領選の結果や米国の12月利上げ観測から円安ドル高が進行すると予想。一方、長期金利は引き続き横ばい圏での推移が続くだろう。

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