仲介手数料を割引している良い不動産会社を見つけるには?(2)

前回 に続き、今回は仲介手数料の割引を行っている不動産会社が構築している仕組みと、良い不動産会社を見つける上での注意すべきポイントをお伝えします。

不動産仲介のパターンと割引ができる仕組み

1件の不動産売買の取引には、(1)売主から依頼を受けた仲介業者 (2)買主から依頼を受けた仲介業者の2社の業者が入ることが多いです。

売買契約が締結され、取引が成立したら、売主の依頼を受けた仲介業者は売主から、買主の依頼を受けた仲介業者は買主から、それぞれ上限以内の仲介手数料を受け取ることができます。こうした取引を不動産業界では「片手仲介」または「片手」といいます。

これに対し、間に入る仲介業者が1社であった場合、その会社は売主と買主の両方から依頼を受け、仲介を行い売買の契約を締結させると、売主と買主の双方から上限以内の仲介手数料を受け取ることができます。

こうした場合、一方の当事者だけの依頼を受けた場合の、最大2倍の額が手に入るわけです。こうした取引手法を業界用語で「両手仲介」または「両手」といいます。

前述の一方の当事者のみの仲介を行う片手仲介に対し、両手仲介はひとつの取引で片手の2倍の利益を得ることができますので、不動産会社にとって嬉しいのはやはり「両手仲介」です。

仲介手数料が無料になる取引の場合、実はこうした「両手仲介」をやっていることが多いです。

ただし、従来の「両手仲介」と決定的に違うのは、一般消費者からは一切の手数料を取らない(無料とする)ことです。たとえば、買主の仲介手数料を無料にした場合、間に入った仲介会社は不動産業者である売主からのみ仲介手数料を得ることで、利益とするのです。

売主・買主のどちらか一方の当事者が不動産業者などの宅建業者である場合、仲介会社は、業者である当事者から手数料をもらえるのであれば、一般消費者である契約当事者の方の手数料を最大無料にできます。売主・買主の両者をマッチングさせるという意味では「両手仲介」であっても、一般消費者に対する手数料を無料とする場合、仲介会社にとっては手数料の面では片手仲介と同様の考え方になります。

一方、買主だけでなく売主も一般消費者の場合において、1社で仲介するケースで、両方の手数料を無料にすると仲介会社の収入がゼロになってしまうので、さすがにそれはできません。ただし、買主・売主それぞれの仲介手数料を上限から割り引くことは可能です。

とはいえ、通常の両手の仲介手数料の上限額を受領する場合に比べれば、もちろん収入は減るわけですから、そこを補てんするため、他の部分にかかる経費を削減するか、別の収入を得る必要があります。

実際に仲介手数料の割引を前面に打ち出している不動産会社の中には、

紙媒体での広告をやめインターネット広告のみに絞り、広告宣伝費を抑える。

接客スペースのある路面店舗や複数の事務所を構えず、ネットと現地案内を中心にした空中店舗型の営業形態にすることで、テナント賃料を抑える。

宅建有資格者である少数精鋭のベテラン営業マンをそろえ無駄な人件費をカットする。

このようなやり方で経費を大幅に削減し、お客様には負担が生じないような企業努力を行うことで経営を成り立たせている会社が出てきています。

REDSが行った「不動産の賃貸、売買の仲介手数料に関する認知度」調査結果によると、「不動産会社が不動産売買の仲介手数料を半額や無料にするために許容できる施策について」という質問について、「広告宣伝費用の削減」「人件費の削減」「店舗にかかる維持費用の削減」「システムの効率化」といったものが上位に挙がりました。

反対に、住宅ローン申し込み代行や相談、物件調査費用の有料化など、「今まで無料だったものが有料になること」については許容できないとした人が2割弱で、お客様に不利益の出ないようにした仲介手数料の割引を求める声が多くを占めています。

仲介手数料割引をしている良い不動産会社の見つけ方

前述のように、仲介手数料の割引は、企業努力により実現しているケースが多いのですが、なかには、仲介手数料が安い分だけ業務の内容も雑で、手薄になるといった「安かろう悪かろう」の会社があることも否めません。

仲介手数料の割引をしていて、しかも良心的な不動産会社を見つける際には次のような点に注意してみましょう。

(1)査定価格の根拠の説明時にチェック

売却を依頼する際に、不動産会社との一番最初のやり取りが対象物件の価格査定です。査定価格が納得のいくものであるかどうかはとても重要です。いくら仲介手数料が割引になるからと言って、あまりにも安い価格で売却されてしまっては意味がありません。相場よりも安い価格で売りに出せば早期売却ができるのは当然です。

「仲介手数料も安くなるし、いいか…」と考えるのではなく、売主である自分の利益を最優先して査定をしてくれているのかをチェックしましょう。あまりにも安すぎると感じたり、逆に高すぎると違和感を覚えたりした時には、正直にその旨を伝えることをお勧めします。

誰でも自分の所有する不動産については高く見積もりがちですから、査定価格について「安い」と感じることもあると思います。その場合には、納得できるまで不動産会社の査定根拠を聞きましょう。査定根拠については法律で明示が義務付けられているため、不動産会社は売主にわかりやすいような資料を用意して、査定価格を詳しく説明しないといけないのです。

そのため、説明が不明瞭だったり、根拠に納得がいかなかったり、提示資料がずさんだったりしたら、その不動産会社は避けた方が賢明です。

(2)「囲い込み」に要注意

自社で買主を見つけて両手仲介したいがために、他社が買主候補を連れてきても、「申込みが入っている」「交渉中だ」「売主の事情で一時的に売り止めしている」などと嘘をついて物件の紹介を拒む「囲い込み」を行う不動産会社もあります。こうした「囲い込み」は、不動産業界の悪しき商慣習として実は今まで日常的に行われてきました。

しかし、ネットの普及により情報化が進んだことやマスコミの報道により、多くの消費者から信頼を集める大手不動産会社がモラルに反した囲い込みを堂々とやっていることが明るみになったことで、不動産業界の透明性と公平性を求める声が高まっています。

「囲い込み」は売主・買主の双方に不利益をもたらします。市場に情報を出さずに自社で買主を見つけようとすると時間がかかり、売主にとってはいつまでたっても売れないということになります。また、高い値段をつけてくれる可能性のある買主が購入の機会に触れることができないということにもなります。

会社の利益ばかりを追求するのではなく、あくまで売主の利益を優先してくれる会社かどうかを注意深く見極めましょう。

(3)割引・無料の条件が限定的でないか

不動産会社がうたっている「仲介手数料無料」は、非常に限られた条件に該当した場合のみ適用されることがありますので、広告などを注意して読んでおきましょう。

「仲介手数料割引・無料」でとりあえず問い合わせを確保し、やり取りをしていくうちに、諸々の事情から割引率が少なくなったり、結果的には他社とそこまで変わらない条件になってしまうケースもあります。「最初と話が違うな」と不安に思ったら、そのままにせず納得できる説明を求めるか、手続きをいったん止めて検討し直しましょう。

築年数が長いなど、売却物件のデメリットとなる要因を理由に割引不可と説明されると、「自分の物件の条件が悪いから仕方ないのか」と引け目に感じ、丸め込まれがちです。そのうえ、物件の見積もり額まで過剰に低くしてきたなら、その業者は悪質なので、それ以上係わるのはやめたほうが賢明です。良心的な業者なら、売主に最も利益が出るよう、より高く、より早く売却を成功させようとします。

仲介手数料の割引交渉は初期段階で

仲介手数料について何も示していない会社に仲介を依頼する場合、ダメ元で、割引が可能かどうか質問してみるのも良いでしょう。その場合、割引交渉は、できるだけ最初の段階がよいでしょう。

査定価格に納得して、契約の段階まで進んでしまうと、仲介手数料の交渉をする機会は意外と無いものです。これから買主との価格交渉などの仲介を行ってもらうわけですから、印象が悪くならないような切り出し方をすることがコツです。

このように、仲介手数料で少しでも得をするには、割引の仕組みと、通常請求されている報酬額(仲介手数料)は法定上限額であるということを理解しておくことが何よりも大切です。

関根祥遙
都内北西部を中心エリアとする不動産会社で売買営業として勤務。消費者に寄り添った視点で、これからの宅建業者に何が求められるかを真摯に伝えたいという思いから執筆活動に従事。東京都出身・在住。(提供= 不動産流通システム )

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