サッポロは負け組なのか?  酒類販売大手と比較

企業の純粋な売上高という面からみると、酒類販売大手のアサヒ、キリンの売上高がそれぞれ2兆2千億円、1兆8千億円である一方、サッポロの売上高は5千3百億円と大きな差をつけられている。

2016年11月2日最新の決算レポートには、本業の利益をしめす営業利益の推移が以下のように示されている。

2016年通期の営業利益予想はサッポロが前年度139億円から201億円予想と大幅な増益基調である。一方でアサヒが前年度1351億円から1407億円予想、キリンが前年度1247億円から1340億円予想の微増益予想となった模様だ。このようにサッポロは他の酒類大手に比べて利益の伸び率でみると決して負けていないことが分かる。

またサッポロの営業利益をセグメント(部門)別にみると、サッポロは国内酒類の販売が30億円から61億円と大きく伸びている。同時に、不動産部門も61億円から80億円へと利益の伸びが相変わらず高いようだ。いまだ不動産頼みでありながらも、サッポロの酒類販売の大きな伸びが実際に数字となって表れている。

メーカーや飲食でもバックボーンに金融がある例は多い

このようなことから、サッポロは不動産企業だと皮肉めいて言われる向きもあるようだが、大手企業でも金融部門に強みを持つからこそ本家の事業を拡大させてきた例や窮地を救った例などがある。

例えば、マクドナルドはハンバーガーなどの飲食業を営んでいる企業ではあるが、儲けの多くは、不動産事業であったことは有名である。FC(フランチャイズ)という形で土地・店舗を権利として売り、店舗からの収益を不動産の支払いへと充てるというビジネスを構築することで収益を拡大してきたのである。

酒類販売という本業の伸びが見られるなかで大人気のスポットである恵比寿ガーデンプレイスの賃貸事業という強みを持つサッポロの事業基盤は堅い。それに、そもそも家のみやちょい飲みという言葉が流行るなど、酒を大量消費しない世の流れになっている中で少ないパイの奪い合いに集中することは企業体力を大きく削ることにつながる。

不動産というバックボーンを持ちながらもこれまで同様に付加価値の高い酒類を提供するオンリーワンの姿勢を貫くということ。そうすれば、昨今のサッポロの利益急上昇に見られるように業績も次第にあがっていくのかもしれない。

谷山歩(たにやま あゆみ)
早稲田大学を卒業後、証券会社において証券ディーリング業務を経験。ヤフーファイナンスの「投資の達人」においてコラムニストとしても活動。2015年には年間で「ベストパフォーマー賞」「勝率賞」において同時受賞。個人ブログ「 インカムライフ.com 」を運営。著書に『 元証券ディーラーたにやんの超・優待投資 草食編 Kindle版 』(インカムライフ出版)がある。