テレビ
(写真=PIXTA)

レオパレス21 <8848> が運営するマンスリーマンションに入居していた20代の男性が、NHK受信料の返還を求めていた訴訟に対する判決が10月27日、東京地裁で言い渡された。男性側の言い分はNHKに受信料を不当に支払わされたと言うものだったが、判決では男性には受信料の支払い義務はなかったとして、NHKが1310円の支払いを命じられた。

佐久間健吉裁判長の判断は、「部屋にテレビを設置したのは物件のオーナーか運営会社であり、男性には受信料の支払い義務はなかった」というものだ。

受信料は放送を視聴する対価ではない

判決によると男性は2015年10月19日、勤務先から指定された兵庫県内のマンスリーマンションに入居。約10日後にNHK関連の職員が訪れ、「受信契約を結ぶ義務がある」と説明されたので受信契約を結んだという。

男性は2カ月の受信料2620円を支払った。その後、男性は11月20日に退去したのでHKは1カ月分の受信料1310円を返した。そこで男性は「自分がテレビを設置したわけではない」、「不当に受信契約を結ばされ、受信料を支払わされた」として残る1カ月分の受信料の返還を求めて提訴していた。

裁判でNHK側は「マンションの運営業者は受信料は入居者が負担すると明示していた」、あるいは、テレビを使っていたのは男性であり受信契約を結ぶ義務があった」と主張している。

しかし判決を見れば、「受信料とはNHKの放送を視聴する対価ではなく、公共的なNHK放送を維持するために、テレビを設置した者に対して公平に負担を課すものだ」との見解を示したのである。

放送法64条が定める内容とは

放送法64条1項本文によれば、協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備などは例外となっている。

具体的には「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第百二十六条第一項において同じ。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない」とされている。

マンスリーマンションにはあらかじめテレビが備え付けられているので、入居者が受信設備を設置した者に当たるかが争点となる。男性側の言い分としては短期間の宿泊施設利用がされるホテルの例を上げ、そこではホテル側が受信料を支払っていることを指摘している。

男性側はNHKの受信料は入居者が支払うべきものではないとし、設置したマンション運営業者が支払うべきものという認識だ。これに対しNHK側では受益者負担の観点からすれば、テレビを現実に占有・管理しているのは入居者本人なのだから、「実質的な受信設備を設置した者」に当たるとしている。

NHKは控訴して争う方針

運営業者によれば、空室の場合、受信料は支払っていないようだ。これまでも受信契約が入居してから本人が契約を結び受信料を支払うようになっているとしている。一方のNHK側も今回の男性が特別なことではないとし、受信料の徴収は「これまでも入居者に負担してもらっていた」と話している。

結果は、男性側に受信料1310円の返金を認める判決となったが、東京地裁は、「物理的・客観的に放送を受信できる状態を作出した者」に支払いの義務があると判断したことになる。

だが判決を受けたNHK側は「契約を締結する義務が居住者側にあることを引き続き2審でも訴えていく」として控訴する意向を示しているようだ。

罰則はない放送法

今回、原告となった男性が入居していたレオパレス21が展開する賃マンスリーマンションには、テレビを含めた家具が設置されている。訪ねて来たNHKの地域スタッフに対し「テレビはない」と言い訳しても難しいだろう。

しかしテレビ付き賃貸住宅は、放送法から言えば長期滞在のホテルと区別することはできないだろう。

放送法64条1項で、「放送を受信できる受信設備を設置した者」に受信契約の義務があると定めている。事前にテレビが備え付けられた場所で短期間の宿泊施設を利用しただけとであれば、受信料負担をすべきは誰かという点について解釈は分かれる。
放送法については、契約しなくても罰則はない。このため無視、居留守で逃れている人もいるだろう。テレビは持っていても、録音・録画で見てる分には放送法には抵触しないからだ。

まだまだグレーな部分の多いこの問題、マンション業者は当面成り行き見守るしかなさそうだ。(ZUU online編集部)