「経済的虐待(financial abuse)」の犠牲になっている女性救済に、英国の銀行が乗りだしている。英協同組合コーポレーティブ銀行が非営利虐待防止団体、Refugeと共同発表したレポートによると、経済的虐待を受けた経験のある英成人は5人に1人。犠牲者の6割以上が同時に複数の虐待(暴力など)を受けている女性で、そのうち3割以上が誰にも相談できずに苦しんでいるという。

これらの女性を保護する目的で、現在経済的虐待の実情を探る大がかりな調査が行われており、来年末までに銀行の自主基準導入を予定している。

女性の犠牲者の6割が被害を隠している

一般的に「経済的虐待」とは、金銭を利用して苦痛を与える行為と定義されている。あまり耳慣れない言葉と感じるかも知れないが、主に高齢者、女性、子どもを犠牲対象に世界中で日常的に繰り返されている卑劣な行為だ。

犠牲者が高齢者の場合、高齢化などで判断力が低下している弱みにつけこみ、不当に財産上の利益を得るケースが圧倒的に多い。女性の場合は「生活費をくれないのに仕事もさせてくれない」「給与をすべてわたすように強要される」「銀行口座を管理される」といった家庭内での支配から、「家族や友人から借金するよう強要される」「被害者の名義で借金する」など被害が外部におよぶケースもある。

銀行が女性の救済に重点を置いている理由は、犠牲者の割合が女性の方が高いことに加え、被害をひた隠しにする傾向が強いためだ。男性による被害報告68%に対し、女性による被害報告はわずか38%にとどまっている。これらの犠牲者は同時に肉体的暴力や精神的暴力を受けていることが多く、恐怖心から被害を隠しとおそうとする。そのため実際の被害件数は、報告されているよりも相当多いと推測されている。

現在英国では銀行間で、虐待されている顧客の口座を保護するための自主基準導入が検討されている。導入された場合、従業員に経済的虐待の犠牲者を見わける訓練などが義務化さるほか、銀行側の判断次第で犠牲者の口座を即座に凍結することが可能になる。またアプリなどを利用して、口座をロックする「非常ボタン」の採用もあり得るそうだ。

「経済的虐待」の判断は非常に難しいとされている。なにが虐待に該当するかの基準が個人によって異なるからだ。例えば英国での虐待基準や保護の対象は比較的広範囲にわたるが、日本では保護の対象が高齢者や子どもに絞られているという印象を受ける。

こうした背景には「日本では高齢者や子どもが犠牲になりやすい」ということが考えられるが、女性の被害が黙殺される、あるいは英国の一部の女性のように、多くの犠牲者が事実を隠している可能性もけっして否定できないだろう。(ZUU online 編集部)

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