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(画像=Webサイトより)

人工知能(AI)で東京大合格を目指すとして注目された「東ロボくん」が2016年度のセンター試験の模試結果を公表した。残念ながら東大合格圏には達せず、受験をあきらめることになった。模試での成績は偏差値57.1だった。次は学生の読解力を高める研究などに注力し産業用への応用をめざすという。

東ロボくんの成績はどうだったのか

そもそもこのプロジェクトは、国立情報学研究所(情報学研)のAIの可能性を検証する目的で2011年度に始まったものだ。目標は2021年に東大入試を突破することだった。今回の模試で4回目の挑戦となったが5教科8科目の合計得点は525点(全国平均は454.8点)という結果だった。

科目別の偏差値では世界史B、物理が比較的、好成績だったが、英語(リスニング)と国語(現代文+古文)は伸び悩んだ。2次試験では、地理歴史(世界史)は偏差値51.8だが、数学(理系)では全6問中4問正解と偏差値でも76.2と好成績だったようだ。

ではこの成績で東大合格は無理としても、レベル的にはどのあたりなのか。国公立23大学や私立512大学では合格可能性が80%以上と判定されている。首都圏や関西の難関私立大は合格圏内だそうだ。

今回の試験は2016年度の大学入試センター試験の模試で行われたが、昨年と比べ物理の偏差値では46.5から59と伸びていたし、理系数学の偏差値でも76.2と好成績をあげている。しかし、11月14日の成果報告会(新井紀子教授)では、問題を理解する読解力に限界があることが明らかにされている。

偏差値57.1で、昨年から横ばいで伸び悩んでいる。成績がよかったのは数学や物理と世界史などだ。しかし、国語や英語では、特に長文問題は非常に苦手で、「読解力」不足が心配されていた。要するに問題文を読み解いて意味を理解することが「東ロボくん」はできなかったわけだ。

読解力とは具体的に何か

実は現在のAI技術の文章を読み書きする仕組みは、おもに「検索」技術を応用したものだ。膨大な文章を調べ、言葉を高い確率で統計的に選び、それらしい答えを返すといった仕組み。

単語の意味を理解したり、短い文を翻訳したりするという点では優秀な「東ロボくん」だが、複数の文章や会話になると、常識とか経験に基づいた人間が持っている行間を読む力はまだ弱い。これはAIが本質的に抱えている弱点と言えるかもしれない。

新井教授は報道で、大切なのはAIが得意とする知識の暗記ではなく、本来人間が得意とする「文章をきちんと読んで意味を理解する力を養うことではないか」と指摘しながら、「文章を読むのが苦手な子供たちを指導する方法の開発にも今後は役立てたい」としている。

プロジェクトは一旦凍結されるが……

結果的には総合偏差値57.1をマークした「東ロボくん」は、MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)と言った大学には合格レベルではあったようだが、結局は東大二次試験を受けるための足切りの点数には届かなかった。

今後は、言語処理と数式処理を進化させ「考えながら読む」技術の開発を進めると思われる。産学連携による究推進で高度な専門性や問題解決型高度人材育成を行っていく模様だ。「東ロボくん」はさらに点数を伸ばすためには、文脈や複雑な文章の意味を理解することが必要となるだろう。(ZUU online 編集部)