米・英・豪・日 上場リート市場の動向

2009年以降、時折調整局面はあるものの各国の上場リート市場は、概ね上昇基調で推移してきた(図表12)。しかし、2016年12月に入って各国リート市場は価格が急落している。これは前述のトランプ新政権への政策期待による金利上昇を要因としており、上場リート価格には下落圧力が生じた状態となっている。

英国については、これより1年遡る2015年11月からの4ヶ月に上場リート価格が下落基調となり、EU離脱の国民投票後にさらに価格を下げている。また米国については、2015年に入った頃に利上げ観測を織り込み、大きく値を下げているが、実際に利上げされた2015年12月前には上昇に転じていたことがわかる。

上場リートは、実物不動産より敏感に金利上昇に反応し、価格に下落圧力がかかるが、実物同様に、保有不動産の収益成長が伴っていれば、その後は価格調整される。米国リートの推移からはそうした調整のあと上昇基調に戻ったことがうかがえる。

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まとめ

不動産投資市場にはサイクルがあるといわれる。その理由として、従来から挙げられているのは賃貸市場が好調期を迎え賃料が上昇すると、それを受けて新規供給がもたらされ、その後需給が緩んで賃料が下がるというものだ。

不動産サイクルの好調期は、通常は好景気によりもたらされるため、景気サイクルと連動する。しかし、近年の不動産価格の高騰は、金融緩和による資金調達の容易さと低金利による投資先不足がもたらした側面の方が大きい。

足元で各国の金利は上昇してきており、これまでとは異なる金融環境になりつつある中、資金フローの側面からは、多くの不動産マーケットで利回りが上昇する局面となると思われる。それに抵抗するのがインカムの成長であり、今後はそれが望める市場(都市・セクター)を選別し、投資機会を得ることが求められる。

加藤えり子(かとう えりこ)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 不動産運用調査室長

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