奨学金のほとんどは学業が修了したら返済を開始始める「貸与型」である。だが、奨学金を受けた本人が死亡したときや精神や身体の障害により返済が難しいと判断される場合は、貸与型であっても返済義務を免除してもらうことができる。
それ以外にも返還免除を受ける方法がある。どのような方法で返還免除を適用してもらうことができるのか、また、申請方法や奨学金以外の学費に関する免除についても解説する。
目次
奨学金の返還免除とは
文部科学省所管の独立行政法人・日本学生支援機構が実施する奨学金は、経済的困難がある場合や海外へ留学した場合などのいくつかの理由に該当するときは、返済額を一定期間半額にする「減額返還」や一定期間は返済せず返済開始時期・再開時期を遅らせる「返還期限猶予」を利用することができる。
だが、これらはいずれも完済する時期を遅らせるだけの方法であって、返済総額は1円たりとも安くはならない方法である。無利子の奨学金の場合は良いが、有利子の奨学金の場合は利息が増えてしまうだけなので、できれば減額返還や返還期限猶予を利用せず、毎月こまめに返済するか、繰り上げ返済を活用して早めに完済したいものだ。
特に優れた業績による返還免除
だが、死亡や心身の問題以外にも、奨学金返還を免除できる方法がある。それが、2004年度に始まった「特に優れた業績による返還免除」制度だ。
これは大学院での勉強のために第一種奨学金を受けたもののうち3割を上限として、大学院在学中に特に優れた業績をあげたものに、奨学金貸与期間修了後に奨学金の全額あるいは一部の返還が免除される制度である。学問分野だけでなく専攻分野(文化や芸術、スポーツ等も含む)における活躍やボランティア等の社会貢献活動も評価対象とされているので、幅広い人材が「特に優れた業績による返還免除」制度を利用できる。
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免除してもらうためには?
特に優れた業績による返還免除を受けるためには、まず大学内で免除候補者としての推薦を受ける必要がある。推薦を受けた学生が学識経験者による業績優秀者奨学金返還免除認定委員会の審査を受け、免除対象者に認定されることになる。
2015年度に大学院第一種奨学金の貸与が終了した2万8806名のうち、各大学から免除候補者として推薦を受けた人は8647名、そのうち業績優秀者奨学金返還免除認定員会の承認を受けた人は8641名であった。このことからも、大学から免除候補者として推薦を受けることができれば、100%に近い確率で奨学金の返還免除を受けられると言うことが分かる。
因みに8641名中、全額免除と認定された人は2880名、一部免除と認定された人は5761名であった。また、どの大学でも免除候補者として推薦を受けられるのではなく、前年度の1年次において第一種奨学生に採用された学生が2名以上いる大学に限定されている。
申請の方法について
あくまでも推薦によって免除候補者が決定されるので、学生として学業やその他の活動を活発に行うことが必要になるのは言うまでもない。だが、いくら学業やスポーツ、その他の活動を熱心に行ったとしても、第一種奨学金を受けている奨学生でなくては奨学金を免除してもらうことはできない。
まずは第一種奨学金に申請すること(一定以上の成績を有した世帯所得が一定以下の学生、もしくは低所得世帯の学生であることが条件となる)が先決だと言える。
大学在学中に申請する場合は、年度初めの春に募集が実施されるので、必ず所属する大学の学生課に出向き、募集要項を受け取り、必要書類を準備して申請期限内に提出するようにしよう。
他にもいろいろ!入学金や授業料免除
学資を免除できる制度は、日本学生支援機構の「特に優れた業績による返還免除」だけではない。入学金や授業料免除の制度を各大学や専門学校でも用意している。
学業優秀者
特に優秀な成績で入学した学生に、入学金や授業料が免除になる制度を実施している学校は少なくない。また、入学後の業績によって途中から授業料が免除になることもある。
学資負担者の死亡
入学1年以内に学資負担者が死亡した学生や、学資負担者が精神的あるいは身体的な障害状態となり学資提供が困難となった学生に、入学金や授業料が免除になる制度を実施している。
在学生あるいは卒業生の家族
在学中もしくは卒業した学生が、きょうだいもしくは子や孫である場合、入学金を免除する制度を実施している学校もある。
早めの準備が大切
まず、どのような免除制度を利用できるのかを知っておくことが大切である。学資の減免制度を利用したい場合は、入学内定時もしくは入学直後に学校に問い合わせ、どのような制度があるのか尋ねておきたい。