「失業すれば誰でも失業保険がもらえるもの」と思っていないだろうか。実際には、失業したとしても、たとえ会社からの一方的なリストラであったとしても、失業保険を受け取れないケースというものが存在するのだ。失業保険の受給資格と、失業保険を受け取るにはどうすればいいのか、状況によって失業保険の受け取り金額がどのように変わるかについて説明する。
目次
失業保険の受給資格とは
失業保険(失業給付)を受給するには、次の3つの条件を満たしていることが求められる。
まず、雇用保険の被保険者であった人の離職であること。そして、ハローワークに来所して求職の申し込みを行うなど、就職しようとする積極的な意思と就職できる能力があるにもかかわらず、努力しても就職できない状態にあること。
さらに、離職の日以前の2年間に、雇用保険の被保険者であった期間が通算12カ月以上あったこと(特定受給資格者・特定理由離職者の場合は、離職の日以前の1年間に通算6カ月以上被保険者であったならば可能)が求められる。
ただし、前提として雇用保険の被保険者であったことが必要だ。雇用保険加入の手続きは事業主が行うもので、労働者や事業主の意思とは関係なく適正に行われなくてはならない。
雇用保険の加入対象者は、事業主との雇用契約のもと労働力を提供する人で、その賃金によって生活をしているすべての人である。
65歳以降に新規雇用された人は対象ではなく、パートタイムで働く人についても雇用期間に期限がない場合か、雇用期間が31日以上で1週間の所定労働時間が20時間以上の場合に限定される。
失業状態については、いますぐ仕事に応じられることが条件とされているので、病気やけが、あるいは妊娠・出産・育児のためにすぐに就職できない人や、結婚や退職を機に一定期間就業を考えていない人については条件を満たさないとされ、失業保険を受け取ることができない。
被保険者期間における「特定受給資格者」とは、倒産や一方的な解雇などの会社都合で離職した人を指す。
「特定理由離職者」とは、契約期間が満了して労働者側が契約更新を望んだものの雇用側の合意がなかったために離職となった場合や、身体的な理由で離職した場合、やむを得ない理由で通勤が困難になって離職した場合、妊娠・出産・育児のために離職して雇用保険受給期間延長措置を受けた場合などを指している。
失業保険の受給までの流れ
失業保険の受給資格を満たしている場合は、どのように手続きを進めればいいのだろうか。
雇用保険被保険者証を確認する
まずは在職しているうちに、ハローワークで「雇用保険被保険者証」があるかどうかを確認しておくと安心だ。ハローワークで「雇用保険被保険者資格取得届出確認照会票」に氏名と生年月日、事業所名を記入し、本人確認ができる運転免許証などを提示すると確認できる。
離職証明書に記名・押印する
会社がハローワークに提出する「離職証明書」に記されている離職の理由などを確認し、記名・押印する。
ハローワークで求職の申し込みを行う
離職後、会社から郵送される(受け取りに行くこともある)「雇用保険被保険者離職票」と、本人確認できる写真付きの身分証明証、写真2枚(縦3センチ×横2.5センチ、正面上半身が写っていて、3カ月以内に撮影したもの)、印鑑、本人名義の普通預金通帳を持って、求職の申し込みと失業保険の受給資格確認を行う。
雇用保険受給者初回説明会に参加する
指定された日に印鑑と筆記具、雇用保険受給資格者のしおりを持って、雇用保険受給者初回説明会に参加する。その場で「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」を受け取り、第1回目の失業認定日を確認する。
4週間に1回はハローワークに行く
原則として、4週間に1回はハローワークに行き、失業状態であることの確認と認定を受ける。具体的には、指定された日にハローワークに向かい、失業認定申告書に求職活動の状況などを記入して提出する。
失業保険の受給金額に関わる事項
離職前に受け取っていた基本日給(基本給や住宅手当、通勤手当などの恒常的に受け取っていた6カ月分の給与合計を180で割ったもの)に45~80%をかけたものを「基本手当日額」とし、失業保険では1日当たりこの基本手当日額を受け取ることができる。
ただし、年齢によって、6370円~7775円の上限がある。この基本手当日額を、90~360日の給付日数分かけたものが、受け取ることができる総額だ。
給付日数は、離職の理由や求職者の条件によって最大日数が決められており、障害を持っているなどの理由で就職が困難とされる場合は日数が長くなっている。
最大日数が過ぎるまでに再就職が決まって就業した場合は、その時点で失業保険の給付は打ち切られるが、再就職手当として残日数分の基本手当日額の5割から6割を受け取ることができる。
給付制限とは
離職理由にかかわらず、ハローワークで離職票の提出と求職の申し込みを行った日から7日間は待機期間といい、失業保険は支給されない。さらに、次に該当する場合は給付制限があり、一定期間は失業保険を受け取ることができない。
自己都合による離職、重責解雇
自己都合で離職した場合や、重大な過失などで解雇された場合は、待機期間終了後に3カ月間の給付制限があり、その期間を経過したあとから失業保険の給付が始まる。
紹介拒否
ハローワークから紹介された仕事や、指示を受けた職業訓練などを正当な理由なく拒否した場合は、拒否した日から1カ月間は給付が制限される。
離職前から失業保険受給の準備を始めよう
失業保険を受け取るためには、自分が雇用保険の被保険者になっているかを確認したり、離職証明書に記入された事項を確認したりと、離職する前からしておかなくてはならないことがいくつかある。しっかりと準備してから離職を行うようにしたい。