相続,争族,相続対策,節税
(写真=beeboys/Shutterstock.com)

もうすぐ年末年始で実家に帰るという人も多いと思うが、親の年齢が70代、80代の場合、相続を意識する時期だろう。「まだ早い」と思っていても、いつ病気や事故に遭うかも分からない。相続は早めの準備が大切なので、この機会に将来の相続について話し合いをしてみてはどうだろうか。

「自分の親は財産を持っていないから関係ない」は本当か?

「相続は争族」とよく言われるが、「自分の親は相続争いになるほど財産を持っていないから関係ない」と思っていないだろうか。

かつては相続税の基礎控除額が「5000万円+法定相続人数×1000万円」と高額だったため、相続税が発生するのは俗に言う「お金持ち」に限られていた。しかし、今では基礎控除額が「3000万円+法定相続人数×600万円」まで引き下げられたため、不動産を所有する場合などでは相続税が発生する可能性が飛躍的に高まっている。

そもそも、相続争いは金額の多寡に関わらず起こりうる。相続税が発生しない場合でも財産分与でもめることがあるからだ。この点についても、兄弟の仲は良いしトラブルにはならないと思っている人も多いだろう。しかし、たとえ数百万円でも兄弟の誰かが多くもらったりすると不平等感を感じるものだ。

実際、裁判所の司法統計から、2014年1月から9月の遺産額別の調停などの成立件数を見ると、金額別での調停数は、1000万円以下が32%、1000万円超から5000万円以下が43%で、75%が5000万円以下でも紛争になっている。

また同じく司法統計から「家庭裁判所における相続関係相談件数」を見ると、2002年には9万6277件だったものが、2012年では、17万4494件と増加傾向にある。

「仲がよいから大丈夫」ではなく、仲が良いなららなおさら仲たがいにならないためにも、早めに話し合いの機会を持っておくことが大事だ。

財産分配は「遺贈」と「死因贈与」の2種

相続人がいくら相続対策しようと思っても、肝心の親が相続に無関心では対策の取りようがない。財産の名義はあくまで親であるから、親族といえども勝手な処分はできない。そのため、早い段階から親に相続を意識してもらい準備してもらうことが大事になる。

とはいえ、改めて親族が集まることは難しいので、家族が集まりやすい正月に相続の話をするのがお勧めである。具体的には、親に現在の資産状況を整理してもらい、リスト化することから始めるといいだろう。

リストができたら、基礎控除の範囲内(3000万円+法定相続人数×600万円)に収まるか確認する。範囲内に収まれば基本的に相続税対策は必要なくなるので、後は財産をどのように分配するかを考えることになる。

財産を分配する方法には、「遺贈」と「死因贈与」がある。

「遺贈」は遺言による財産移転、「死因贈与」は、死亡を原因とする点では遺贈と同じだが、遺贈が被相続人の単独行為であるのに対し、死因贈与は契約であるという点で異なる。単独行為と契約の違いは、単独行為はいつでも自由に撤回や修正が可能ということである。だから、遺言は何度でも書き換えられる。

死因贈与を使う意味はないのかというとそうではない。たとえば、介護の面倒を見てもらう代わりに家を贈与するといった契約をすることができるからだ。ただ不動産を死因贈与する場合、登録免許税や不動産取得税といった税金が通常の売買と同様に課税され、遺贈に比べると不利になってしまう。その点は注意が必要だ。

遺言の4種類

遺贈をする場合、遺言を作成しなければならないが、その種類として(1)公正証書遺言、(2)自筆証書遺言、(3)秘密証書遺言、(4)特別の遺言がある。

もっとも(1)と(2)だけ覚えておけば十分である。(1)の公正証書遺言は、公証役場で、公証人が遺言者から遺言の内容を聞き取り、2人以上の証人の立会いのもとで作成される遺言書である。非常に信頼性が高く最も有効な遺言と言える。ただ、費用が掛かるので何度も書き換える予定の場合には向いていない。

(2)の自筆証書遺言は、遺言者が、自筆で遺言の全文、日付、氏名を記入した遺言である。手軽に作成することができるが、内容が不十分だと無効とされる場合もあるのでその点は注意が必要だ。

遺言は、遺言者の意思が明確に示されたものなので、基本的に尊重されるが、一定の相続人には「遺留分」という相続財産の一定の割合を受け取る権利が認められている。そのため、遺留分を害するような相続がなされた場合、その減額請求されるおそれがある。

話し合いの機会を持つことから

財産が基礎控除の範囲内に収まらない場合には、相続税対策を考えなくてはならない。相続税の節税対策としては、「生前贈与」が有名であるが、どのように分配するかなど素人では判断が難しいこともある。法律や税に詳しくない場合には専門家の活用も考える必要がある。税ということであれば税理士だし、遺言や紛争予防という点では弁護士に依頼するとよい。

以上、争族にならための方策について見てきたが、難しいことよりも相続について話合いの機会を多く持つことが何より重要なので、あまり堅苦しく考えるのではなく、気軽に親と話してみたらよいのではないだろうか。(ZUU online 編集部)

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