厚生労働省が2016年12月22日に発表した、2015年の「人口動態統計」によれば、婚姻件数は63万5156組、離婚件数は22万6215組だった。実に3組に1件が離婚している計算になる。「離婚に関する統計」によれば、同居してから5年未満で離婚する夫婦が最も多い。しかし、この5年未満の離婚件数は、婚姻数が減っていることもあって減少している傾向だ。

一方で長年連れ添った夫婦の離婚が増えていることはご存じだろうか。同居してから20年以上の夫婦の離婚率が増加傾向なのだ。定年退職を目前に、妻からいきなり離婚を切り出され呆然とする男性も少なくない。自分だけは大丈夫と思っても油断は禁物だ。

今回は離婚にまつわるお金の話を解説する。もしも自分だったら、と思いつつ読んでいただきたい。

財産分与は夫婦共有財産が対象

男性の読者の心に留めて欲しいのは、妻が満を持して離婚を切り出してきた場合、すでに準備は整っていると考えるべきだ。婚姻中に作った夫婦共有の財産は、離婚の際に「財産分与」という形で清算することになるが、当然受け取る額は多いほうがいい。共有財産がどれだけあるか、そしていくら請求するかもしっかり計算しているはず。

それに対して、財産分与の対象になる資産が何かもわからなければ対等な話し合いすら難しい。まずは、夫婦共有の財産を確認してみよう。

一般的なところでは、婚姻中に取得した不動産(土地・建物)、預貯金、車、有価証券、掛け捨てではない生命保険などが該当する。たとえ名義がどちらか一方になっていたとしても、他方の協力がなければ取得できなかったとみなして、共有財産の扱いになることに注意が必要だ。たとえ夫名義の不動産だからと言って、無条件で夫固有の財産にはならないのだ。共有財産にならないものは、結婚前の預貯金や親等から相続した財産になる。

離婚時の年金分割、離婚時の決断が一生涯影響

離婚をした時、厚生年金記録を夫婦で分割することができる制度がある。婚姻期間中の厚生年金も、夫婦共有の財産との考え方にならえば理にかなっているとも言えるが、分割をすれば、老齢年金の給付額に直接ひびくため安易に考えてはいけない。なにしろ一生涯受け取るので、離婚時の決断がずっと影響するのだ。

分割のためには条件が3つある。
1. 婚姻期間中に厚生年金の保険料を払っている
2. 夫婦の合意、または裁判手続きによって按分割合を決めている
3. 離婚から2年以内

この、「2.夫婦の合意」が難しいケースが多い。しかし合意を判断する前に、まずは年金額を確認することが先だろう。最寄りの年金事務所で「年金分割のための情報提供請求書」により確認すれば、分割した場合の金額がわかるので参考にするとよいだろう。

老後資金はいくらあれば安心か

長年連れ添った妻に感謝して、あるいはしぶしぶかもしれないが、もしも離婚になったら財産が減るのは致し方ないことだ。そこで、老後の生活を安心して送れる金額はいくらなのか、事前に把握しておこう。

総務省の「家計調査報告」(2015年)によれば、高齢無職世帯が1カ月に必要な生活費は約15万6000円だ。ただし、これは持ち家を前提とした衣食住の基本的な費用。家賃の負担がある場合はもちろん、趣味を楽しみたいなどの希望があればその分も上乗せしておく必要がある。現在の生活費を基準に考えてみるとより具体的にイメージがわくだろう。

さらに、急な病気や介護などに備えて、200~300万円程度の予備資金も必要だろう。さて、男性の平均寿命は80.89歳だが、65歳の男性が何歳まで生きるかを表した平均余命では88.55歳。それまでの期間、年金や残った財産でまかなえるか計算をしておきたい。

65~90歳までの老後資金を試算してみると、
・65~90歳:25年間
・月の生活費:15万6000円×12カ月×25年=4680万円
・予備資金:300万円
・合計:4980万円

約5000万円はかかるということがわかる。

ライフプランの変更に余力を持とう

ライフプランの大幅な見直しになるできごとは離婚だけではない。失業、病気やケガ、配偶者の死亡などでも大きく変わる可能性がある。しかし、離婚との大きな違いは「保険」があることだ。失業保険、医療保険、生命保険で備えておけば、生活が破たんするリスクを減らすことができる。

離婚にかけられる保険はないので、自分で備えておくほかない。まずは、夫婦の関係を良好に築いていくことに越したことはないだろう。精神的にも経済的にも、もっとも望ましい老後が送れるのではないだろうか。

海外では結婚時に離婚した場合の取り決めをしている例も

何事も備えあれば憂いなし。海外セレブの間では、結婚時に離婚をした場合の財産分与についての事前取り決めもしている例もある。

俳優のトム・クルーズは、3人目の妻ケイティ・ホームズとの間に「結婚生活が11年以上続いた場合に財産半分を分配し、11年未満であれば1年につき300万ドル渡す」と決めてあったという。結婚の時に離婚の話をするという、日本人には違和感のある話かもしれないが、リスクに準備するという考え方は見習っても良いだろう。

結婚時に離婚のことまで決めておくことに驚くが、夫婦がうまくいっているからこそ、もしもの時の話をしておく、という考え方は参考になるだろう。

タケイ啓子
ファイナンシャルプランナー(AFP)36歳の時に2人の子をつれて離婚し、大手生命保険会社に営業として就職。そ の後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを発症。現在はがんとお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。FP Cafe登録FP

【編集部のオススメ記事】
「信用経済」という新たな尺度 あなたの信用力はどれくらい?(PR)
資産2億円超の億り人が明かす「伸びない投資家」の特徴とは?
会社で「食事」を手間なく、おいしく出す方法(PR)
年収で選ぶ「住まい」 気をつけたい5つのポイント
元野村證券「伝説の営業マン」が明かす 「富裕層開拓」3つの極意(PR)