帰省した際に親類縁者が集まると、お墓の話になることがある。いつもより話しやすい雰囲気になるのか、お墓を生前に建てることやお参りしやすい場所に移すことなども話題になりそうだ。しかし、お墓選びは独特なルールがあり、基本的なポイントを押さえておかないと、後になって気まずい思いをしてしまう。3つのポイントを解説しよう。
残す家族の負担を少しでも減らしたいという「生前墓」を建てるという観点からポイントを探る。
ポイント1:立地 お墓選びはこれに尽きる
お墓選びは「立地」に尽きるといってもいい。高齢化社会の進展で、お参りする側も高齢になっている事態が起きている。
これは東京のような都市部で深刻な悩みだ。東京市町村自治調査会が2011年3月に公表した「墓地と市町村との関わりに関する調査研究報告書」によると、墓地を選ぶ際に重視する内容として「交通の利便性」を挙げた人が、77.6%と8割近くに上り、「価格」と並んで墓地選択の重大要素だと分析している。
さらに、墓地の取得が必要と答えた人の理由を聞いたところ、「自分または家族の墓地を生前に取得しておきたいから」(60.4%)がトップ。「現在持っている墓地が遠方にあるため」(33.3%)がこれに続いている。
特に墓地をすでに保有していると答えた人は「現在持っている墓地が遠方にあるため」(63.6%)と回答しており、生計を立てている、より身近なところにお墓を持ちたいという思いが強いようだ。
立地を見極める具体的なチェックポイントは、公共交通機関を使った場合の所要時間だろう。お墓を現地見学すると、最寄りの駅などから送迎サービスなどもあるが、これも出来るだけ実際のルートや時間を確認したい。
費用を抑えたい場合、墓石が要らない納骨堂を選択する手もある。駅から徒歩圏内に建てられている場合が多く、都内なら買い物帰りにちょっと寄るなどという、新しい参拝スタイルも可能だ。
霊園などを現地見学した際、施設や設備もチェックしておきたい。駐車場や休憩所などは誰しも気になるところだが、見落としがちなのが水道施設。お墓の掃除などの際に、建てる墓から水道が遠いと、手間がかかる。手酌などは霊園側で貸してくれるが、水を運ぶため何度も行き来することは珍しくない。
ポイント2:宗派 不問かどうかは経営主体による
次のポイントは、宗旨・宗派だ。霊園・墓地によっては、「宗教不問」とする場合と「在来仏教」や「○○宗」など特定の宗旨・宗派に限る場合、「仏教以外の宗教」とする場合など様々である。
これは墓地、霊園が経営主体によって性格が違うためだ。都道府県や市町村などの自治体が運営している「公営墓地」は、宗旨・宗派を問わない。公益法人や宗教法人が経営している「民営墓地」も基本的には同様だが、寺院の教えに従うルールなどを標榜している場合もある。寺院境内にある「寺院墓地」は、檀家になることが条件の一つだ。
ポイント3:価格 お墓の価格体系は複雑
3つ目の最も重要なことが、価格・費用。お墓の価格体系や仕組みは分かりにくいうえ、法要などの諸経費も頭に入れておく必要がある。
まず、お墓を建てる際には、土地の使用料である「永代使用料」と霊園側に毎年支払う「管理料」、墓石を作る石材店に払う「墓石料(工事費を含む)」が必要だ。
永代使用料は、墓地になる土地が少ない首都圏はやはり高い。1.5平方メートルの広さで都内霊園平均は360万円。一方、神奈川県や千葉県など車でお参り可能な場所では同90万円程度。駅から近いとまた高くなる。お墓選びは広さ、墓石の種類などを含めて総合的に考えたい。
墓石業界独特のルールも知っておいた方がいいだろう。霊園は、宗教法人のほか、通常複数の石材店などが共同開発する場合が多い。霊園見学すると、霊園入り口に石材店の待機所があり、担当が案内してくれる。見学者については、共同開発した石材店がローテーションで対応することになっている。そして、見学者の対応をした石材店が販売の権利を得て、独占的にお客への墓石発注や工事を受け持つ仕組みだ。
これを知らないとどまどう。とくにネットなどで事前に調べた石材店に、好みの墓石があった場合などは厄介だ。石材店をあらかじめ決めたくない場合は、見学をしても「他の霊園と比較したいから」などの理由で個人情報を明かさずにしておこう。指定は出来ないが、何度か足を運んで違う石材店の担当者から話を聞くこともおすすめだ。
最近はインターネットで霊園や石材店探しをすることも容易になった。メリットは、「海が見える霊園」「花で囲まれた墓地」などのキーワードで探すことができる点だ。ただ、デザインに凝った墓石にする場合、周囲の墓石との違和感がないよう配慮することも重要だ。
「終活」が人気となった理由の一つは、自分の思い通りの墓地や霊園をピックアップできることだろう。いずれも事前の情報収集とチェックポイントをしっかり頭に入れておこう。(ZUU online 編集部)
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