住宅ローンの折込広告や銀行ポスターでは、一昔前には考えられなかったような低い金利が表示されており、住宅ローンの借り換えを検討している人も多いだろう。しかし、ローンの借り換えによって、必ずしも返済が楽になるとは限らない。住宅ローンの借り換えを行う場合はどのような点に注意するべきなのだろうか?
借り換えの原則
まず忘れてはならないのは、借り換えには諸経費がかかることだ。一般的には次の条件を満たすと、諸経費を考慮してもなお借り換え時メリットがあるとされている。(1) 金利差1%以上、(2) 返済期間が残り10年以上、(3) 残りの借入れ金額が1000万円以上--だ。
結構厳しい条件に見えるが、これはあくまで目安。諸経費無料化の流れが加速する今、これらの条件全てを満たさなくとも借り換えメリットがある場合もある。
この原則を頭に入れたうえで、注意したい3つのポイントをご紹介しよう。
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落とし穴1:諸経費は当初だけとは限らない
借り換え時には諸経費を考慮しなくてはならない。諸経費には「保証料」「事務手数料」「登記費用」などがかかる。費用の内訳は金融機関ごとに異なる。借り換え時は諸費用の総額をしっかり比較するだろうが、支払い方法に落とし穴がある。
それは諸経費には、当初支払うタイプのものと、金利上乗せタイプのものがあるということだ。例えば保証料がかかる住宅ローンでは、支払い方法が前払一括型と金利上乗せ型に分かれ、上乗せする金利は0.2%程度かかる。決して高くはないがランニングコストは見逃せない。
落とし穴2:審査基準は厳格 ヘッドハンティングでも勤続年数には考慮されず
新たな借入れ先では当然住宅ローン審査が行われる。詳細は金融機関ごとに異なるが、2~3年の勤続、年収300万円程度が一般的な要件とされる。そのため借り換えの前に転職をしたり、たまたま業績悪化でお給与が減ったりした場合には審査が通らない可能性があるのだ。マイカーローンや、子供の学資ローンを組むことも審査に不利となるので注意したい。
難しいのは、ベッドハンティングや実績を買われての転職でも、勤続年数で審査が引っかかってしまう可能性があることだ。しかし、借り換えのために条件のいい転職を蹴ることはできないという人も多いだろう。こういった転職の場合は勤務条件が良くなったことや、お給料が上がったことなどをアピールして審査が通るよう働きかけるといいだろう。
落とし穴3:健康状態に注意
民間金融機関の多くは団体信用生命保険(団信)に加入できない借り入れができない。そのためローンを組んだ頃より健康状態が悪化していると借り換えが難しくなる。
これは健康な時でも意外な落とし穴になり得る。というのもここ数年、団信の内容がバラエティに富んでいるからだ。単純に死亡・高度障害を保障するだけでなく、3大疾病、5大疾病など病気だけでなく、ケガや、介護状態、果ては自然災害に備える団信も登場している。年齢が上がる健康への不安も増加するため、加入の誘惑が増す。必要かどうか吟味し、団信保険料が借り換えのメリットを上回らないよう気を付けよう。
金利の変わらない借り換えもある
実は金利差がなくてもリットのある借り換えもある。それは金利上昇リスクに備えるための借り換えだ。現在、変動金利か、期間選択型固定金利のローンで支払っている人が、今後返済額が上昇しないよう全期間固定金利に借り換えるケースだ。
この場合は返済額が変わらなくとも、「一定の返済額」を手に入れれば目的は達成する。現在変動金利や固定金利期間選択型のローンを組んでいる人は、「金利差1%以上でないとメリットはない」という思い込みを捨てて、検討してみてはいかがだろうか。
借り換えは、基本の3条件さえ満たせば得をするというものではないし、たとえ得をするとしても審査や健康状態の課題がある。これらの壁を乗り越えて、よりよい借り換えを目指すといいだろう。
横山 晴美(よこやま はるみ)
ライフプラン応援事務所代表
2011年にFP資格(AFP)取得。2013年ライフプラン応援事務所を立ち上げ、企業に所属しない独立FPとして活動。住宅・子育て・老後といった普通の人がぶつかるお金の問題を解決すべく相談業務・マネーセミナー等を行っている。住宅ローンアドバイザー。
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