英国会計検査院が昨年11月に発表した報告書から、英歳入税関庁(HMRC)による最富裕層からの税徴収率が著しく低下していること、税金逃れの手段を徹底的に利用したと疑われる資産が昨年だけで19億ポンド(約2744億1614万円)にのぼることなどが判明した。

HMRCは最富裕層専用の特別監視部門設立などで取り締まり強化を主張しているが、英国会計検査院はHMRCの対応に異論を唱えると同時にさらなる追求を要請している。

英歳入税関庁が最富裕層を優先?英国会計検査院の疑念

富裕層によるタックスヘイブンなどを利用した多額の税金逃れは、英国でも問題視されている。相次ぐ取り締まり強化要請をうけ、HMRCは最富裕層からの徴税を効果的かつ効率的に行うという名目のもと、2009年に特別監視部門を設立。現在200万ポンド(約2億8885万円)以上の資産を所有する6500人が「特別納税者」の対象となっている。

しかし「各最富裕層に顧客関係マネージャーが対応する」という優遇対応の効果には、疑問をいだかざるを得ない。設立以降、総収入税が230億ポンド(約3兆3219億円)増えているにも関わらず、これらの特別顧客からの徴収総額は10億ボンド(約1444億2955万円)も減っているのだ。

報告書ではさらに疑惑を強める要因として、最富裕層による徴収詳細が記録されていないことなどが挙げられている。2014年度の最富裕層による納税総額は430億ポンド(約6兆2105億円)。詳細として所得税および国民保険(350億ポンド/約5兆550億円)、譲渡所得(8億8000万ポンド/約1270億9800万円)は記録されているものの、相続税など個人資産額を見積もるうえで重要な指針となるそのほかの納税記録が省略されている。

また一般的な納税者と税務署員との電話アドバイスは録音する決まりであるのに対し、最富裕層と顧客関係マネージャー間の会話は一切記録が残っていないという点も不自然だ。英国会計検査院は、そもそも顧客関係マネージャーの役割(アドバイスの許容範囲など)が明確化されていないことなども指摘している。

英国会計検査院の疑惑を裏づけるかのように、最富裕層の法逃れも報告されている。2010年から2015年にかけて72人の最富裕層が脱税の容疑で起訴されているが、犯罪行為として捜査を受けたのはわずか2人。そのうち1人が有罪となっただけだ。英ガーディアン紙は「HMRCによる最富裕層への監視が、例えば小企業や福祉金受給者に対するものよりもはるかに甘い現状が報告書の結果に反映している」と報じた。

英国会計検査院はこうした最富裕層への優遇措置的対応について、HMRCに詰問する意向を示している。(ZUU online 編集部)

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