ブランド力とグローバル化

スイスのグローバル企業であるネスレは年商10兆円、利益率15%という業績に加え、人材は世界中から集まっていて、ダイバーシティに支えられたグローバル化とブランド力を持った企業です。本拠地であるスイスは人口800万人の小国であるからこそ、数十年も前から企業は思いきった戦略を打ち出し国際競争力を高めています。食品だけでなく、製薬や金融、重電などでも世界企業を多く輩出しており、一人あたりのGDPは日本の倍と言われています。

そんなネスレの取り組みとして企業年金の支給がありますが、日本ネスレも含め60歳で退職した場合、現役時代働いていた時の基本給の半分を一生支給され取り組みがされています。今のご時世、こういった手厚い福利厚生の取り組みから世界中から優秀な社員が集まるのは理解できるところです。グローバル人材の核となっているのは多国籍のエリート集団たちからなるISと呼ばれるインターナショナルスタッフで、全社員35万人の0.2%弱、約700人から構成されています。ISのスタッフたちは自国以外の世界各拠点を渡り歩き、数カ国語を操っていることから、グローバル・ダイバーシティ・コア経営人材と呼ぶべきものと言えます。この数十カ国の国籍からなる700人で構成されるISの持つ専門性は、IT、ファイナンス、マーケティング、オペレーション、人事、経営企画、企業経営等があり、世界本社はもちろん各地の拠点を数年単位で渡り歩くことで最適なグローバル戦略を実現していると考えられます。優秀な人材で起こりうる他社からの引き抜きも、生涯年金のおかげで実現も容易ではないと言えます。

見習いたい専門性の高い人材

日本の大手企業もグローバル化を目指しているならこのような数十カ国から多様な専門性の高い数カ国語を操れる人材を集め育てる仕組みを考え始めた方がいいと言えます。これは企業のトップが意識しない限り人事部では無理な話なのです。ネスレをはじめとするスイスの優秀グローバル企業は、この20年から30年間で自己の弱みを認識した上で世界に誇るグローバル組織人材体制を整えてきています。日本の大企業も、英語力や多様性を数万人の社員全員に強制する必要はなく、各部門の核となる10%位にあたる数千人の人材がグローバル対応を自由自在に行えるように訓練していけばよいと考えられます。