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(写真=PIXTA)

2016年後半、投資信託の信託報酬は熾烈な低コスト競争の時代に入りました。運営管理機関で運用商品の最も多いSBI証券で確認すると、最低コストは0.13%、最高コストは2.10%と、実に1.97ポイントの開きがあります(2017年1月5日調べ)。

ここまで信託報酬が下がった背景には、iDeCo(個人型確定拠出年金)の制度改正による個人顧客のシェア争いが大きく影響していると考えてよいでしょう。

通常、投資信託を活用するには、購入の際に支払う手数料と、保有している間は毎日かかる手数料があります。ところが、iDeCoの場合は、購入時の手数料は必要ありません。したがって、保有期間の手数料である「信託報酬」の差が、年金資産の形成を左右するといっても過言ではありません。

iDeCoでは、信託報酬の差がどれくらい影響するのか?

実際に、SBI証券で取り扱っている運用商品のうち、信託報酬の低い商品【A】(年0.1296%)と高い商品【B】(年2.0972%)で比較してみましょう。

年間12万円のかけ金で30~59歳の運用期間と想定すると、次のような結果になります(運用益や他の手数料は除く)。

[表1]

最終的に59歳での資産額は、信託報酬が年0.1296%の【A】では352万8,581円、一方、年2.0972%の【B】では263万5,787円となり、差額は89万2,794円にまで広がることが分かります。これを見ると、信託報酬は低いほうがお得となります。

信託報酬の相場感を知るには?

信託報酬は投資信託ごとに設定されており、それぞれの商品パンフレットや「目論見書」に掲載されています。信託報酬の割合は概して2系統あり、低めのインデックス(パッシブ)型と高めのアクティブ型に分かれます。

・ インデックス(パッシブ)型:指数で運用→コストが低い
日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)といった「インデックス=指数」に連動した運用を目指します。指数の構成銘柄に投資するため、投資先の調査などの手間がなく、コストを抑えることができます。信託報酬0.1~0.3%台の商品が増えてきました。

・ アクティブ型:ファンドマネージャーが運用→コストが高い
指数への連動ではなく、その上の運用成績を目指します。ファンドマネージャーが投資先を調査して選び、運用成績は投資信託ごとに異なります。人の手間がかかる分、比較的コストもかさみます。信託報酬は1~2%前後が多いようです。

信託報酬の低い商品をそろえた機関が、1兆円市場を制す

2017年1月の制度改正で、iDeCoの加入対象者は約4,000万人から約6,700万人へと増え、ほぼすべての現役世代が加入できることになりました。この巨大市場のシェア争いが序盤で盛り上がっている理由の一つは、運用管理機関を移しにくいという点です。つまり、iDeCoに加入する人は、長年にわたって運用管理機関を変えず年金資産を形成するため、信用報酬を低くして初期の段階で多くの加入者を獲得したところがシェア争奪戦を制することになるのです。

iDeCoは年金制度ですが、税の優遇があり手数料も少ない投資商品と見ることもできます。なかでも指数に連動するインデックス(パッシブ)型の投資信託は、信託報酬も低く抑えながら手堅く運用できるので、投資をこれから始める人や始めたばかりの人にはおすすめの商品といえるでしょう。(提供: IFAオンライン

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