トランプ大統領,規制緩和,恩恵,金融機関
(写真=Thinkstock/GettyImages)
  • 米銀は、トランプ氏当選以降SP500株価指数をアウトパフォーム。特に地銀が大幅上昇
  • 足元の株価はやや落ち着いているが、米中堅金融機関については、今後の一段の規制緩和の対象になる可能性大。資本が盤石な先にはまだ上昇余地がある
  • なお、邦銀では米MUFGのストレステストの一部免除が発表されており、恩恵が相対的に大。他行については、米国が現在議論中の国際規制強化案に介入してくるかが焦点

2月3日、トランプ氏が金融規制緩和の大統領令に署名した(図表1)。その後、人事的にも金融規制をリードしていたダニエル・タルーロFRB理事の辞任と、過去に地銀の再生も手掛けたスティーブン・ムニューチン氏の財務長官就任で、金融機関の規制緩和期待が高まっている。6月初頭までに改革案がまとめられる。

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トランプ氏の当選後、特に大統領令発表後、米銀株は好調に推移してきたが(図表2)、足元でやや落ち着きを見せている。しかし、規制緩和に向けて、徐々に動きも活発化してきた。中堅中小金融機関については、まだ規制が緩和される可能性が高いと考えられる。特に資本規制や手数料上限が緩和されれば、貸出の活発化や配当の増額で、ROEの上昇が期待できることから、株価にも上値余地があるだろう。

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金融規制緩和に向けた動き:まずはストレステストの緩和

トランプ政権発足前の昨年9月、共和党で下院金融サービス委員会の委員長を務めるJeb Hensarling氏が、金融規制改正案(金融選択法、Financial CHOICE Act)を策定していた。これには、ドッド・フランク法に定められたストレステストや資本比率の計算方法の修正が提案されていた。(ドッド・フランク法については、文末の図表8を参照)。2/3の大統領令を受け、近々その改訂版が提示される模様だ。

また、2/13には米主要地銀18行の最高経営責任者(CEO)が米議会に対し、資本要件や、受取り手数料の上限を緩和するよう求めた。現在報道されている修正金融選択法及び、地銀CEOの要望事項の主なポイントは以下の通りである。

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最初に動きだしたのは、ストレステストの見直しである。ストレステストとは、毎年各行がFRBが定める悲観シナリオ下での資本比率を試算し、当局に資本力のお墨付きをもらう、というプロセスである(概要を後掲図表7に記載)。

米国のストレステストは、欧州のストレステストとは異なり2段階で行われる。米FRBはまず、各行が計算した資本比率の合否を判断する。更に、資本の管理体制など定性的なチェックを行い、問題がある場合、配当計画を差し止めるなどの措置を発表する。しかし、以前から、定性的なチェックの判定基準が不透明で厳しすぎるという声が上がっていた。

この定性検査については、大統領令の直前の1/30に、「総資産USD250bn<約28兆円>未満の中堅金融機関を免除する」とFRBが発表している。免除行には、BB&T、フィフスサードなどの大手地銀や米国MUFGや米国ドイツ銀行などの外国銀行が含まれている(後掲図表7)。

大手行に関する規制緩和のハードルは高い

一方、図表1のb)にあるように、今後も、税金を使った銀行救済は行わない方針である。巨額の税金を使って救済されたという"前科"のある大規模金融機関を規制緩和の対象とするのは、やはり容易ではないだろう。例えば、大手行側は、自己勘定取引の禁止が市場に与える悪影響を主張しているが、FRBの発表データでは、まだその論証は難しいようだ。

これに対し、中堅中小金融機関は、中小企業金融の担い手であるため、議会に対して規制緩和の大義名分が立ちやすい。実際、米国の法人向け融資全体は年率で8%程度増加しているが、100万ドル以下の少額融資は、ほぼ横ばいである(16/9月時点)。法人向け融資全体に占める少額融資の比率も10年前の30%から20%に大きく減少している(FDICデータ)。

金利上昇と規制緩和から中堅中小金融機関の株価に上値余地

図表4の各点は、米国の主要中堅金融機関の株主資本利益率(ROE)と株価純資産倍率(PBR)を示している。このうち、*を付している銀行は、1/30付のストレステストの緩和の対象になった銀行である(名称が記されている赤点の金融機関は、弊社注目銘柄)。今後、この*の先については、今後のその他の金融規制緩和の対象にもなりやすく、資本の余裕を貸出や配当に回す余地が大きいと考えられる(図表5)。

また、米国の銀行は、過去に比べて預貸率(貸出÷預金)が低下している(=貸出に対して預金が増加)。このため、FRBの政策金利引き上げによる収益メリットも受けやすくなっている。貸出レートは市場に直ぐに連動するが、預金金利の引き上げのタイミングや引き上げ幅は、ある程度銀行が裁量で決められるためだ。

これらの点から、規制緩和の対象となりやすい中堅金融機関で、現在の株価がやや割安、かつ、資本に余裕があるBB&T,サントラスト、ディスカバー、シチズンズ、ハンチントン、アライ・ファイナンシャルズ、ジオンズなどに注目したい(図表6、地銀以外に総合金融機関を含む)。但し、規制緩和議論は、まだ始まったばかりであり、その決定には時間がかかり、その効果が表面化するのには更に時間が必要となることから、長期的な視野で臨みたい。

なお、邦銀については、今回ストレステストの定性評価免除行の一つに入ったMUFGのメリットが大きい。MUFGは、他の邦銀に比べ米国の金利上昇の恩恵も受けやすい。それ以外の金融機関についても、図表1のe)で謳われているように、現在佳境に入っているBISの国際資本規制の議論に米国が「待った」をかけるなら、恩恵は極めて大きい。3月中旬頃には、米国の国際資本規制議論へのスタンスが見えてくる可能性がある。今後は、米国内の規制動向だけでなく、BISにおける米国の発言が注目される。

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大槻 奈那(おおつき・なな)
マネックス証券 チーフ・アナリスト

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