山崎製パン,過去最高益
(画像=Webサイトより)

山崎製パン <2212> の2016年12月期の連結決算は、23年ぶりの過去最高益となった。会社の看板ともいえる「リッツ」や「オレオ」のライセンス生産を16年8月末で終了するという「ナビスコ・ショック」を乗り越えて、過去最高益を更新した業績の牽引役はなんだったのだろうか。

山崎製パンの前期決算は会社予想を上回り過去最高

山崎製パンが2月14日に発表した16年12月期の連結決算は、売上高が1.4%増の1兆419億円、本業の利益を示す営業利益が30.3%増の352億円、最終利益は63.8%増の182億円だった。

最終利益ベースでは、食パンの「ダブルソフト」がメガヒットした1993年12月期以来23年ぶりの過去最高益だ。

昨年2月の期初時点での会社予想営業利益は300億円だったが、中間時点で340億円に上方修正、最終的にはさらに上振れして352億円で着地した。今17年12月期の会社予想の営業利益は5.2%増の370億円、2期連続で過去最高益を更新する見通しだ。

ナビスコ・ショック

山崎製パンは16年2月12日の15年12月期決算発表時に、主要連結子会社である「ヤマザキ・ナビスコ」において、主力製品であるビスケットの「オレオ」ならびにクラッカーの「リッツ」など4商品について、46年間続けてきた米モンデリーズ・インターナショナル社(旧・ナビスコ)とのライセンス契約を解消すると発表した。この突然の発表に市場は大きく反応、翌営業日の14日の株価は一時14%安まで売られた。

ヤマザキ・ナビスコの15年12月期の売り上げは403億円、営業利益は34億円。山崎製パンの営業利益270億円の約13%を占め、利益貢献の高い子会社だったからだ。売上403億円の中で、自社製品であるポテトスナックの「チップスター」がトップブランドだが、「リッツ」などモンデリーズの4商品はあわせて約150億円と売り上げの40%程度を占める看板商品だった。

山崎製パンは、9月1日より「ヤマザキ・ナビスコ」改め、「ヤマザキビスケット」となった。「チップスター」「エアリアル」などの既存製品の拡販と、新たにリッツをターゲットとした商品「ルヴァン」をラインナップとして大々的に売り出すことで主力商品販売終了の穴を埋める計画だった。

16年12月期のヤマザキビスケットの決算をみると、売上は3.7%減の388億円、営業利益は27.6%減の25億円。新製品「ルヴァン」が頑張ったことで、期初の会社計画は達成したものの、大幅減益は不可避だった。

史上最高益は山崎製パンの「利益率改善」

山崎製パンの史上最高益の牽引役について分析してみよう。16年12月期の連結営業利益362億円は15年に比べて82億円の増益となっている。親会社である山崎製パンの営業増益への寄与が58億円、子会社群が24億円だ。今回の連結史上最高益更新は、本体の収益改善が大きく牽引した。子会社は不二家、サンデリカ、東ハトなどが好調だったが、やはりヤマザキビスケットが足を引っ張った。

ダブルソフトが品質向上をはかったことで売り上げは8.8%増の74億円、小型バラエティー食パンの「ゴールド」シリーズに「レーズン」「チーズ」「チョコ」などを加えたことで売り上げ2.7倍の44億円となるなど、小ぶりのヒットはあったがメガヒットは見当たらない。

利益拡大のトリガーとなったのは、ナビスコ・ショックを契機に、生産部門、営業部門など社内全体が危機を乗り越えるために一丸となって、収益の改善に取り組んだことだ。

高品質高付加価値製品と低価格製品による「2極化戦略」、および「厳撰100品」で商品点数の絞り込むことで効率化。また、デイリーヤマザキの物流を自社に切り替えることで収益改善を実現した。

円高、小麦粉安などで原材料安メリットも寄与し、粗利は35.9%から36.5%と0.6ポイント上昇した。逆に。販管費はリストラ効果で33.3%から33.1%へと0.2ポイント低下した。

株価は低迷を脱するか?

2月14日の決算は会社予想からは上振れしたものの、アナリストのコンセンサス予想通りだったため、15日の株価は2.7%安と売りが先行した。トランプラリーの株価上昇で昨年来高値を更新する銘柄が多い中、山崎製パンの株価(2月21日)は2208円と16年の高値の3050円(7月8日)からは28%下げた位置にある。株価の上昇には、原材料安につながる円高か「リッツ」を埋めるメガヒット商品といった材料が必要だろう。(ZUU online 編集部)