ドル円予想レンジ 112.70- - 116.00
「菜の花畠に、入日薄れ、見わたす山の端は、霞ふかし」-。これは文部省唱歌で有名な『朧月夜(おぼろづきよ)』の一節だ。春の夜に月がほのかに霞んでいる情景を指すのだが、時期的には黄砂の影響で月が霞み、天体観測には不適な月夜とされる。(次回満月は3/12)
米利上げを霞ませている材料
3/1、トランプ米大統領は今後1年間の施政方針を議会で演説。筆者が気になったのは3点。①「米国第一主義」に変化がないこと、②方針の具体策が霞んでいたために3月中旬に議会提出される予算教書の行方、そして③拡張的な財政政策に対するFRBの利上げタイミングである。
①の「米国第一主義」を筆者は“排外主義的な地産地消策“と解釈。結果、輸入関税を引き上げ、輸入物価や賃金の上昇圧力が強まり、インフレ圧力に転ずる、と読む。但し、輸入価格上昇は家計の購買力低下、消費の重石となる公算が高い。1月の米個人消費支出は前月比での伸びを縮小していたことから、3/6週は1月の米耐久財受注、貿易収支、2月の輸入物価指数や雇用統計をFRBは注視しそうだ。
②においては、巨額な減税・インフラ投資は共和党の懸念する財政赤字拡大に繋がるため、調整の難航を想像。但し、演説時、左右後ろに控えていたマイク・ペンス副大統領、ポール・ライアン下院議長らが政権と議会が紛糾しないように配慮した予算に落ち着かせるのではないか。
③については、3/15のFOMCに注目だ。FRBタカ派は利上げによる景気後退リスクは低いと読んでいるのだろうが、ハト派のブレイナード理事でさえも「追加利上げが早期に適切」と述べたことはある意味衝撃的だ。予測不能ながらもトランプ施策はインフレ加速リスク、として“FRBは後手を避けるための予防利上げ”とした見方が強まるかもしれない。シカゴFEDウオッチは前号指摘時点と逆転。3/2時点での3/15利上げ確率は75.3%にまで上昇している。
ドルの霞が晴れれば対円の可動域拡大か
3/6週ドル円は日足一目均衡表「変化日」とされるネジレ形成が発生。上値焦点は1/30、2/15高値圏114.97、115円節目。そして1/20、27高値圏115.40。超えれば1/19高値115.635視野で1/11以来の116円台期待視。下値焦点は3/2安値113.71、3/1の114円示現後の戻り安値113.465。割れると113円台維持、3/1安値112.75意識。2/28終盤にFRB幹部らから3月利上げに前向きな発言が相次いで急上昇した112.30-70価格帯を最終拠点と推考。
武部力也
岡三オンライン証券
投資情報部長兼シニアストラテジスト