韓国,失業者
(写真=PIXTA)

韓国毎日経済新聞によると、2017年1月の韓国全体の失業者は7カ月ぶりに100万人を超え、なかでも製造業の雇用は世界金融危機以降で最も低い水準になったという。若年層の失業率は前年同月より少ないが、各企業が採用を控える状況下で若年層が積極的な就職活動を諦めたことから表面上の失業率が下落したという分析がある。

韓国統計庁が2月15日に発表した「2017年1月雇用動向」によると、17年1月時点の就業者数は前年同月比で24万3000人増加したが、失業者も2万2000人増の100万9000人となった。製造業の就業者数は約16万人減少し、7カ月連続で職を失う人が新たに職を得る人数を上回る状況が続いている。造船・海運など4大業種の構造調整の影響が続いているものとみられている。

自営業に飛び込む失業者

失業者が増えるなか、自営業者も増加した。1月の自営業就業者数は前年同月比で16万9000人増となった。20〜40代は減少したが、50代と60代以上でそれぞれ11万9000人と24万1000人が増えたという。製造業から押し出された50代以上の失業者が生活のために自営業に飛び込んだのだ。

失業者の増加は家計を直撃する。韓国銀行が2月21日に発表した「2016年 第4四半期の家計信用」によると16年12月末の家計の債務は1344兆3000億ウォンで、国民1人当たり2613万ウォン(約260万円)に及ぶ。前年比141兆2000億ウォン(11.7%)増と統計を始めた2002年以降最大で、増加率も10年ぶりの高い値となっている。

金融債務が金融資産を上回り、元利返済が可処分所得の40%を超える「限界世帯」は、2012年の11.7%(28万9000世帯)から18.0%(36万2000世帯)に増え、自営業者の限界世帯は20%前後の高い水準となっている。

韓国で設立されたベンチャー企業のうち、創業3年を過ぎて生き残る割合は38%水準で、OECD主要26カ国中25位。4年以上生存率は32%、5年以上生存率は29%という。韓国では1年以上の勤務者は退職時年収の12分の1以上の退職金支給が義務付けられており、退職金を元手に自営業をはじめながらもおよそ6割が3年以内に廃業している。

16年から定年60歳延長法が施行、若者たちは就職できない!

公式な統計上の失業者はおよそ100万人だが、就職準備生や予備校・職業訓練機関などの通学者、休職者、1週間に18時間以下の就業者などを合わせた「事実上失業者」は3倍以上といわれている。なかでも15歳から24歳の若年層の失業は深刻だ。

若年層の失業率は4年連続で上昇し、16年11月時点で10.7%に達した。16年から定年60歳延長法が施行されて、法定定年は55歳から60歳となり、人件費の負担が急増した企業には新規雇用の余裕がなくなった。2月の卒業と同時に失業者となる新卒者はかなりの数になると見込まれる。

韓国では契約社員や派遣社員は2年が上限だ。2年を超えて同じ事業者が継続して雇用する場合、正社員として採用しなければならない。若年層の正社員雇用を確保するのが本来の目的だが、2年で契約を打ち切るケースが多く、「事実上失業者」の増加要因となっている。(佐々木和義、韓国在住CFP)