JASRAC,著作権,ヤマハ音楽教室
(写真= Fh Photo /Shutterstock.com)

JASRAC(音楽著作権協会)と大手の音楽教室の間で、著作権使用料を徴収する予定のJASRACに対して、教室側は反発するという騒動があった。法廷闘争までも辞さない構えだ。この問題の底流にはなにがあるのか? 問題をここまでこじれさせたのはなにか? これから一体どうなるのだろうか。

真っ向から対立する両者の言い分

JASRAC(日本音楽著作権協会)は来年1月から、「ヤマハや河合楽器など大手楽器メーカーなど運営している音楽教室で演奏される楽曲に対して、年間受講料の2.5%を徴収徴収すると発表。これに教室側は猛反発し、政府にも訴え、裁判も辞さない構えだ。

JASRACの言い分はこうだ。著作権料徴収の法的根拠として、著作権法上の第二十二条「著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として上演し、又は演奏する権利を専有する」を示し、公衆(今回の場合は音楽教室の生徒たち)の前で演奏する行為はこの法律に該当するため、著作権料を徴収するという。

以前からJASRACはカラオケ教室やカルチャーセンターの楽器教室、ダンス教室、フィットネスクラブからは著作権使用料を徴収している。このため「(メーカー主催の)楽器教室のみ著作権使用料を支払わないのは公平性に欠ける」とも主張している。

これに対して音楽教室側は、そもそも教育目的での楽曲利用は著作権法でも免除されており、「楽器教室は教育の場であり、教室での演奏に演奏権は及ばない」との立場だ。また著作権使用料は公衆(不特定多数)への楽曲利用が対象なので、音楽教室内での生徒(つまり特定少数)はこれに該当しないとしている。

音楽家たちからも、たとえば「残酷な天使のテーゼ」「淋しい熱帯魚」などの作詞家・及川眠子(ねこ)氏や歌手の宇多田ヒカルさんからは、「音楽教室で『練習のために』弾いたり歌ったりするものから、使用料をもらいたいと思ったことなどない」、「もし学校の授業で私の曲を使いたいっていう先生や生徒がいたら、著作権料なんか気にしないで」といった声が寄せられている。

またお笑いタレントの松本人志さんもテレビの番組中でJASRACへの不快感を露わにした。ニュース報道やSNSなどで情報が拡散したことで、一般人を巻き込んだ炎上騒ぎが巻き起こるなど、事態は泥沼の様相を見せている。

JASRACの役割は、『創造のサイクル』を維持すること

そもそもJASRACとは、なにをする組織なのか? 日本音楽著作権協会という名称の通り、音楽CD、DVDなどの売上げ、テレビ、ラジオ放送、コンサートなどで演奏される楽曲などから著作権料を徴収し、収益を分配する役割を担っている楽曲数は国内外約350万曲、著作権の及ぶ範囲は、作曲、作詞、編曲、歌唱、演奏など幅広い。

著作権使用からの収益は個々の音楽家に還元され、それは明日につながる創造のための糧となり、それがひいては日本の音楽界の振興に貢献する。とくに今日のようなコピー全盛のフルデジタル時代においては、クリエーターの収入と権利を担保する活動はとても重要だ。音楽文化を守り“創造のサイクル”を維持しているのだから、JASRACの存在意義はきわめて大きいはずだ。

著作物を利用する側にとっても、いちいち権利者に連絡して承諾をとらなければいけないわけではなく、合理的なシステムではあるのだ。

しかし、なぜかJASRACの評判は良くはない。受益者である一般ユーザーからすれば、お金を取られる一方なので面白くないのかもしれない。

またJASRACが長らく一社独占体制を続け、ときには横暴ともいえるその厳格な管理姿勢が不満を集めてきたという側面はある。

現在の音楽著作権管理は、JASRACだけでなく(株)ジャパン・ライツ・クリアランス、(株)イーライセンスなど、複数社存在している。ただし業界の慣例として、JASRAC有利の契約条件がいまだに残っていると指摘する声は多い。

今回の騒動も、そもそも教育を目的としている音楽教室からガリバーJASRACが著作権使用料をむしり取ろうとしている、という印象を多くの人に与えてしまった点にあるようにも思える。

冷静な議論と明確な立法化に期待したい

いま一度、争点を明らかにしたい。

音楽教室での演奏は、果たして公衆を前にした“演奏”なのか、それとも純粋に“教育”なのか。また音楽教室の生徒は“観客”なのか、それとも“練習生”なのか。

音楽教室は生徒から授業料を徴収している営利事業なので、教育目的といわれるとたしかに疑問ではある。とはいえ音楽教室の練習はやはり“教育”であり“演奏”とはいい難い。

そもそもこうした営利を目的とした教室での楽曲練習に対して、著作権使用を明確に定めてこなかった法律の方にも問題があった。報道によれば、文化庁著作権課の担当者も、「今回の事例が演奏権にあたるのかどうかは現時点では何とも言えない」と発言しているという。

JASRACとしては、7月に文化庁に使用料規定を提出し、来年1月から徴収を始めたい考えのようだ。

これら対して音楽教室側では大手の音楽教室を中心に「音楽教育を守る会」を結成した。すでに約200社を集め、さらに多数の文化人などの賛同を得たという。今後はJASRACの方針に対して協議を進めていく方針だ。和解にいたるか、本格的な法廷闘争となるのか、あるいは双方納得の適切な判断がなされるのか。余談はできないが、まだまだ紆余曲折はありそうだ。

一般の人もネット民も、どちらか一方の主張を鵜呑みにするのではなく、冷静な議論と納得できる結論を期待したい。(ZUU online 編集部)

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