地元企業,上場企業
(写真=PIXTA)

株式市場に上場することで投資家から広く資金調達をしようと、多種多様な企業が上場している。圧倒的な人気を誇るのはテクノロジー企業で、地方地盤の小売業やサービス業は一般的に人気がないとみられることが多い。

しかし過去の事例では、上場時に不人気業種とみなされ株価が上昇しなくとも、その後に地方地盤を活かしたビジネスを展開することで、株価が上場時の5倍を超える企業も存在する。

IPO銘柄の選定時に地方地盤に着目してみると、意外なお宝株が見つかるかもしれない。そこで直近上場した地方を地盤とする企業3社と過去の成功事例を確認してみたい。

やまみ <2720>

やまみは広島県三原市に本社を置く豆腐や厚揚げ、油揚げなどを製造・販売する企業だ。2016年6月17日JASDAQに上場している。

西日本の禅寺「仏通寺」に奉納した国産大豆を100%使った木綿豆腐などが主力商品だ。ほかにもゆず風味やスンドゥプ風味、枝豆風味の豆腐などを販売している。

売上推移以下の通り堅調だ。

14年6月期:77億円
15年6月期:90億円
16年6月期:94.8億円

業務内容の特徴から上場前の初値期待はそれほど高くはなく、初値も1751円と公開価格の1690円に対して3.6%程度の上昇にとどまっている。そのため業績から見た株価水準はPER16倍台といまだIPO銘柄にしては割安である。初値形成後、いったん売られたものの最近では盛り返しの兆しを見せている。

丸八ホールディングス <2720>

丸八ホールディングスは、静岡浜松市を発祥とする羽毛布団などの寝具を販売する企業だ。「一番身近なふとん屋」をテーマに、対面で高品質の寝具を販売している。本社は神奈川県横浜市で2016年4月8日に名証2部に上場している。

百貨店や海外などにも卸を行っている。

丸八ホールディングスの売上推移は以下の通り堅調だ。

14年3月期:199億円
15年3月期:209億円
16年3月期:221億円

同社も地方証券取引所に上場でありかつ業種が寝具の卸売ということもあり、公開価格の680円に対して、初値は757円と11.3%程度の上昇率にとどまっている。

上場後株価も横ばいの推移であったが、ここ数ヶ月は上昇トレンドへと転換した向きがある。割安指標であるPERはいまだ10.33倍と割安な水準だ。

岐阜造園 <1438>

岐阜造園は本社を岐阜市に置く公共施設などの造園緑化工事などを事業とする企業。2016年11月1日に名証2部に上場した。

売上高の推移は以下のとおりだ。

14年9月期:38億円
15年9月期:41億円
16年9月期:40億円

造園緑化の分野では唯一の上場企業というニッチな位置付けとなる。

こちらも初値は1191円と公開価格1150円を約4%程度上回る水準であった。PERは7.69倍と割安で株価はいまだ初値を下回る水準(1165円)で推移している。

時価総額が17億円程度と小型で現在の割安さを考慮すると今後の業績次第では大化けする可能性もある。

地元密着で成功した企業 アイケイケイ <2198>

2010年リーマンショック後の低迷相場が続く中、結婚式のゲストハウス形式のウェディングなどを九州、四国や東北などの地方で展開するアイケイケイという企業がJASDAQに上場した。

結婚式という景気にそれほど左右されない業態であるにも関わらず、初値は1112円と公募価格の1320円を大きく割り込んでしまった。しかしその後、順調に業績を伸ばして、今では初値当時の値段の5.7倍にまで株価を上昇させている。(現在795円 ※株価は8分割後の株価)

マザーズのIPO銘柄のように短期で数倍という派手さはないものの、アイケイケイは地方地盤ビジネスが成功した事例の一つだといえるだろう。

地方地盤のビジネスには狙い目の企業も

IPO市場ではここまで説明したように、地方地盤ということで上場当初は資金が集まらずに株価もそれほど上がらないケースは多い。しかし、業績推移の堅調さと割安さからその後時間をかけて株価を上げていく企業が存在することも確かだ。

話題性とテーマ性から短期の投機資金が集まるマザーズ銘柄とは異なる堅調な株価の動きをするところも地方地盤の不人気業種の魅力と言える。地方地盤に着目してぜひとも第二のアイケイケイを見つけたいところだ。

※業績紹介に伴う売上推移や指標面の数値は四季報オンラインより引用。

谷山歩(たにやま あゆみ)
早稲田大学法学部を卒業後、証券会社にてディーリング業務に従事。Yahoo!ファイナンスにてコラムニストとしても活動。日経BP社の「日本の億万投資家名鑑」などでも掲載されるなど個人投資家としても活動中。個人ブログ「 インカムライフ.com 」。著書に「超優待投資・草食編」がある。