法律事務所による消費者金融への過払い金返還の相談を呼びかけるコマーシャルが頻繁に流れる一方、金融機関によるカードローンの宣伝も同じくらい目にする機会が増えてきた。

高金利の貸し付け、多重債務で借金地獄という、ややネガティブな印象が付きまとっていたカードローンだが、最近のコマーシャルではCM好感度の高いタレントが起用され、そのイメージアップを担っている。

2010年に施行された改正貸金業法で消費者金融業界は変革を迫られた。そうした中、この規制の対象外である銀行などが、新たな成長分野としてカードローン事業に積極的に乗り出したことで、カードローンの貸し過ぎが懸念されている。多重債務や借金地獄を回避するため、利用者としてはどのような点に注意しなければならないか。

使途の縛りなし、担保不要、広がるカードローン

カードローンのメリットとしては、住宅購入や事業資金など貸出資金の使途に縛りがなく、無担保で借りることができる点だろう。さらに、改正貸金業法の施行以降、消費者金融の業績が落ち込む中、銀行が積極的にカードローン事業を展開し、資金需要を取り込んでいる。

日銀の統計によると、2016年12月末の銀行のカードローン残高は、前年末比で約1割増の5兆4377億円まで伸びた。さらに、日銀が主要銀行を対象にして、16年12月から17年1月までに実施した貸出動向アンケートでは、個人向けの消費者ローンの資金需要判断指数(DI)は、プラス7と前回調査(プラス4)から伸び、依然として底堅い資金需要があることが伺える。

カードローン市場で増す銀行の存在感

カードローン市場で銀行の存在感が増す契機となったのは、改正貸金業法の施行だった。高金利の返済に苦しみ、複数の貸金業者から借金を重ねる多重債務者が、借金を返済できない状況が社会問題としてクローズアップされ、法律の改正に至った。

その主な内容は、グレーソーン金利を廃止するため、法律上の上限金利が29.2%から15%-20%に引き下げられ、借入残高が年収の3分の1を超える際の新規の借入制限だ。これにより、消費者金融は貸出金利の引き下げに加え、さらには過払い金返還請求のコストで負担が増して収益が圧迫された。

改正貸金業法の規制の対象となったのは、消費者金融やクレジット会社などで、貸金業者ではない銀行や信用金庫などは対象外だ。そのため、銀行では年収の3分の1を超えるカードローンを借りることができ、債務者の返済能力を超えたカードローンの貸し過ぎが指摘される。

銀行にとってみれば、日銀のマイナス金利導入以降、企業向け融資や住宅ローンの金利の低下によって収益が悪化する中、相対的に高い金利で利ざやを確保できるカードローンは、ポテンシャルを秘めた収益の柱だ。こうした事情から、各行はカードローン事業を強化し、コマーシャルを含めて積極的なPRに乗り出している。

銀行カードローンでも過剰貸付・借入が横行

「最短30分審査」「申込日にも借入可能」「ネットで24時間365日申込可能」「最高○○万円」など、銀行のカードローンのホームページには、簡単で便利に利用できるうたい文句が並ぶ。

銀行が提供するカードローンゆえに、ヤミ金業者のような容赦ない取り立てを警戒する必要はないだろう。しかし、計画性を持たずに利用することは、貸し手がどこであれカードローンでは避けなければならない。

たとえば、年利1.8%〜14.6%で最高500万円まで借入できるカードローンがあったとしよう。注意しなければならないのは、幅のある金利で、借入額が大きくなるほど、低い金利が適応される点だ。例えば、10万円以上100万円以下の借入には、10%を超える金利がかかる。

金利数%の数字だけに目を奪われ、ちょっとした手元の資金需要を満たすために借りるつもりが、思わぬ金利負担で返済に苦しむケースもある。また、200万円未満のローンでは、収入証明書も不要なため、返済能力を超えたカードローンを組んでしまうことにもつながりかねない。

日本弁護士連合会は、年収を超えるカードローンを貸し付けている実態がアンケート調査で浮かび上がったとし、銀行などに対し、消費者の過剰な借り入れを防ぐため、年収の3分の1を超える貸し付けを実施しないことなどを求めた意見書をまとめた。こうした事態を受け、全国銀行協会の国部毅会長(三井住友銀行頭取)は、「改正貸金業法の趣旨を踏まえて、適正な消費者金融市場の形成に資するように必要な対応を検討する」としている。

日銀のマイナス金利政策の導入後、銀行などの金融機関は、新たな収益源としてカードローン事業強化を目指しているが、消費者は銀行から提供されるというサービスに安心し、カードローンの実態を理解しないまま、借入に手を出してしまうケースがある。初めてでも簡単で安心という言葉に踊らされず、消費者自身が返済能力と金利負担を考慮して、カードローンと向き合うことが求められている。(ZUU online 編集部)

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