住宅市場の回復は遅い?

イエレン議長は、住宅市場の回復については、「おおむね失望している」と述べました。米住宅市場は、依然、住宅バブルで痛手を負った銀行が融資に後ろ向きであることもあり、中古物件販売での1次取得者は27%と、平均水準である40%にはまだまだ遠い状況です。また、物件価格の高騰も、住宅購入意欲を削ぐ結果となっています。住宅市場の回復は雇用指標ほど順調ではないようです。

ただ、そういった状況を受けて、政府は無策であるわけではありません。米連邦住宅金融庁は5月中旬に住宅公社2社の事業を拡大する方針を掲げました。公社の住宅ローン債権の買い取り拡充によって、資金手当てができると見込んだ金融各社が融資条件を緩くすることが期待されています。年後半の住宅市場は、こういった政策の後押しもあるため、大きくプラスに振れることも期待できます。引き続き、年後半の住宅市場指標を注視していく必要があるでしょう。


米景気の現状と今後の見通し

金融緩和が長期化し、長期金利も低く抑えられている結果、リスクオン傾向が強まり、アメリカでも大幅な株高を達成しています。ただ、金融緩和に依存しただけの株高ではなく、企業業績も順調に回復しており、ほぼすべての業種で業績が上向いています。低成長・低インフレにも関わらず、IT部門、エネルギー部門では2桁の増益見込み。市場予測でも、7~9月期で前年比約11%を達成する見込み。長期金利上昇リスクや原油高リスクはあるものの、引き続き、米経済は堅調に推移すると考えられます。雇用市場や住宅市場も米景気回復にけん引されて、今後の見通しも明るいとみて良いのではないでしょうか。


おわりに

堅調な米経済にも関わらず、イエレン議長によっても、FOMCメンバーによっても、ゼロ金利解除まではまだ道遠しといったところと考えられます。緩和縮小により、マネーの逆回転、経済への打撃がある可能性を考えれば、確実に景気が回復したといえる段階までは、利上げを行うことは難しいでしょう。タイミングを誤れば、折角回復過程にある米景気に水を差す可能性があるからです。利上げ実施は2015年度中とされています。現在の回復ペースを大幅に上回る指標が出てくるかどうかを注視していく必要があるでしょう。

また、世界の資金の中心地である米利上げによって、現在のリスクオン状況には少なからず変更が出てくることが予測されます。米雇用統計、インフレ率、住宅市場をしっかり注視していくようにしましょう。

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