債務超過の危機が迫る東芝 <6502> の米国原子力子会社ウエスチングハウス(WH)が米連邦破産法11条の適用を申請する方針を決定したと報じられた。3月27日付けの日本経済新聞の1面トップで報じられ、明らかになった。

2006年に東芝が6000億円で買収

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(写真=testing/Shutterstock.com)

報道によると、WHは現地時間27日、同法の申請を進めるべく調整の会合を電力会社などと行う予定。現在米国で建設中の2カ所の原子炉建設については、「同法適用後も続ける方向で協議中」と日本経済新聞は伝えている。会合後の28日には取締役会を開き、決議されれば東芝が申請を承認する見通しだ。

WHは米国の大手原子炉メーカー。2006年に東芝が約6000億円で買収し、子会社化した。当時、東芝はWHを原子力事業の戦略企業として位置づけ、原子炉の海外輸出を推進するシナリオを描いた。

ところが原子力事業の海外展開は、シナリオとはまったく別のストーリーを辿ることになったのだ。2011年の東日本大震災を機に、海外では原子炉建設の見直しが活発化。米国では原子炉建設の規制が強化されたことで、建設中の工事が大幅に遅延した。工期延長にかかるコスト負担をめぐって発注元との訴訟が行われるなど、2016年3月期には約2500億円の減損損失を計上するに至った。

さらに窮地の東芝に追い討ちをかけたのが、WHが2016年に買収したCB&Iスティーブ・ウェブスター(S&W)の抱えていた負債だ。買収時には105億円で試算されていた資産価値だったが、再評価によって巨額損失が明るみになり、その損失額は7000億円を超える可能性があると発表された。主力事業の再編や売却、人員削減等によって、財務体質の建て直しを図ったことで回復していた東芝の株価は、発表後に大幅に下落した。

連邦破産法11条とは

今回WHが適用を申請する米連邦破産法11条(チャプターイレブン)とは、倒産手続きのうち、経営陣を変えることなく債務整理や経営再建を目指せる手続きである。日本ではこれに相当する法律として民事再生法があるが、米国では経営危機にある企業の再建手法として用いられており、過去には航空会社やコンサルティングファーム、自動車メーカーなど、大手企業にも適用されている。

米連邦破産法11条が適用されると、WHは裁判所の管理下に置かれることになる。東芝はWHを連結から外すことで、倒産の危機を回避。また訴訟や債権回収は一時的に停止されるため、工期の遅延などで膨張するWHの債務額を確定させることもできる。債務超過の危機が目前に迫る中、東芝にとってWHの切り離しは最優先事項だったに違いない。ただしWHに米連邦破産法が適用されても、東芝には親会社として1兆円程度の一時的な追加損失がでるとの見方もある。

東芝はすでにWHと技術協力関係にある、韓国電力公社グループに支援協力を要請済みだ。日経によると、英国原発計画における運営会社の株式売却交渉も始めている。今回の申請によってWHを連結対象から外すことができれば、東芝は債務超過を回避し生き残りに道が拓けるのだろうか。(ZUU online 編集部)

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