経済活動を行うためには、まず資金が必要になる。従前は、銀行などの貸し付け、ファンドやエンジェル投資家などが新しい事業に対してお金を送り込む役割を果たしてきた。しかし、インターネットを利用したテクノロジーが発達した近年はその構造が変わりつつある。
現在、インターネットを利用して多くの人に自分のアイデアを見てもらい資金を集めることができる「クラウドファンディング」と呼ばれる仕組みが注目を集めている。
クラウドファンディングとは
クラウドファンディングは、英語のCrowd(群衆)とFunding(資金調達)を合わせた造語で、プロジェクトごとに必要な資金を公募することができるサービスである。また、金融とITを掛け合わせたFinTech(フィンテック)のひとつとして分類することができ、モバイルやクラウドなどの先進テクノロジーを利用した、従来の金融システムに利便性や流動性を与えるサービスでもある。
本来であれば、銀行や投資家などにしっかりとコスト回収、収益性など投資という観点で有効であることを示さなければ、資金調達は難しいという一面がある。一方、クラウドファンディングに参加する資金の出し手側の判断材料は様々であり、募金に近い形式もあるので、社会性の強いビジネスや実験的だが面白いプロジェクトでも、多くの人に賛同を得られれば資金調達を成功させることができる。今ではクラウドファンディグは資金調達の一つとして金融機関も乗り出しており、その広がりは大きくなっている。
空家問題とは
このクラウドファンディングの活用によって、解決が期待されているのが「空家問題」だ。野村総合研究所の予測(総務省発行の「平成25年住宅・土地統計調査」を実績値に野村総合研究所が予測)によると、2033年に日本の総住宅数に対する空家率は30.4%、2,167万戸に急増するという。
現在、日本には、空家はどのくらいあるのだろうか。総務省の発表によると2013年時点で820万戸ある。5年前に比べて63万戸(8.3%)増加した。空家率(総住宅数に占める割合)は、同じく2013年時点で13.5%、5年前に比べて0.4%増加している。
空家を放置しておく問題点として、建物の老朽化による倒壊の危険性、雑草や悪臭など衛生環境の悪化、不審者の不法侵入による治安悪化などが挙げられる。その一方で、空家の解体は進んでこなかった。なぜなら、建物の解体には多額の費用がかかるうえ、更地で所有するよりも建物ある土地を所有する方が、固定資産税等が安かったからである。
このような問題に対応するため、2015年には「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行された。この法律により市町村長が、倒壊する恐れがある等、放置することが不適切な状態にある「特定空家等」に対し、修繕・解体を勧告したり、命令したりすることができ、従わない場合は強制的に取り壊すことも可能となった。
もちろん空家の所有者自身にも毎年、固定資産税がかかるので、空家を放置しておく経済的負担も大きい。さらに「空家等対策の推進に関する特別措置法」の規定に基づき、勧告があった場合、その空家の宅地についての固定資産税等の特別対象から除外され、結果として固定資産税等の負担が増えることとなった。
空家対策とクラウドファンディング
このような流れとテクノロジーの進化は、地域、不動産オーナー、経営者などにとっては新たなチャンスになり得る。しかし、修繕して再利用するにしても、その資金が大きなネックとして存在する。そこで、その溝を埋める可能性があるのがクラウドファンディングである。
例えば、古民家などをリノベーションし、ゲストハウスとして再利用するとしよう。そのゲストハウスをPRすることで地域に観光客を呼ぶことができる。周辺経済までに波及して活性化させることも可能だろう。こういったプロジェクトなどクラウドファンディングを通して企画すると地域活性化などに興味がある個人が投資をしてくれる。その結果、空家対策の資金が必要なオーナーと社会貢献を望む個人のニーズが合致し、クラウドファンディングがうまく問題を解決するソリューションなのだ。
クラウドファンディングの活用が日本を強くする
クラウドファンディングは社会性の強い事業を扱う際には非常に優秀なファンディングプラットフォームだ。特に、人口減少や観光客向け宿不足という問題を抱えている地域では、上記のようなクラウドファンディングの活用が求められているだろう。(提供: みんなの投資online )
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