日本の公的年金の支給開始年齢が少しずつ引き上げられ、そのうち65歳未満で年金を受給できる世代はいなくなる。今後年金の受給開始年齢がさらに引き上げられる可能性もささやかれているなか、年金に関する話題は注目度が高く、とりわけ大切な年金資産を扱うGPIFの運用実績には目が離せない。今回はGPIFについて解説する。

GPIFとは

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(写真=KPG_Payless/Shutterstock.com)

GPIFは、「Government(政府)Pension(年金)Investment(運用)Fund(基金)」の頭文字をとった呼び方で、正式名は年金積立金管理運用独立行政法人という。年金積立金の管理と運用を行う。保険料のうち、年金の支払いに充てられなかったものを将来の年金支払いに備えて運用している組織である。

公的年金制度は世代間扶養をとっているため、自分が支払った保険料が将来年金として支給されるのではなく、現在の年金受給世代の年金に充てられている。そこで「支払いに充てられなかったもの」が運用される。GPIFで公開されている「年金積立金の規模の推移」によると、2006年度末では年金積立金全体の資産額に対するGPIFの運用資産額は77%程度(115兆円)だったが、2015年度末には94%程度(135兆円)まで上昇しており、近年の役割の大きさがうかがえる。

GPIFでは経済や金融の専門家である運用委員会が審議し、意見を述べるとともに管理運用業務の実施状況の監視を行っている。GPIFは決定した運用方針に従って、信託銀行や投資顧問会社などの運用受託機関に運用を委託し、運用受託機関が金融市場で実際に取引を行うのだ。

GPIFの運用方法(ルール)

GPIFは、「長期的な観点から安全かつ効果的な運用」を基本としている。資産運用においてリスクは「値動きの幅」のことを示すが、GPIFの方針は長期運用かつ、最低限のリスクで必要なリターンを得ることができる運用方法が原則だ。商品性や値動きが異なる複数の資産に分散して長期運用することで大きな損失を被らないようにしている。

2015年4月1日付の「年金積立金管理運用独立行政法人中期目標」で運用方法を確認することができる。運用の目標は、実質的な運用利回り1.7%としている。年金給付のため流動性を確保しつつ、最低限のリスクで実現する目標値だ。この運用方針を基本に、複数の資産を組み合わせた基本ポートフォリオを資産構成割合として定めている。

基本ポートフォリオによる約135兆円の構成割合は、国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%と定められている。以前の国内債券60%、国内株式12%、外国株式12%、外国債券11%、短期資産5%の構成割合と比べるとより収益性を求める運用方針となっている。ちなみに、2016年9月末での実際の構成割合は、国内債券36.15%、国内株式21.59%、外国債券12.51%、外国株式21.00%、短期資産8.75%となっている。

GPIFの運用成果

GPIFが公表している最新のデータによると、2016年度第2四半期の収益額は2兆3,746億円で期間収益率は1.84%である。また、2016年10月から12月までの3ヵ月の運用益は10兆円前後との報道もある。2015年度の収益額がマイナス5.3兆円(収益率はマイナス3.81%)と発表された時はそのマイナス幅が注目を浴びたが、長期的な視点で運用されているため、目先の収支だけに一喜一憂せずに実績を見ていくことが重要だ。135兆円という巨額な運用資金のなかで、5.3兆円の損失は4%未満の損失に過ぎない。数字の増減だけではなく、運用総額を念頭においた資産の増減率で考えることが重要だ。

年金積立金の運用実績は、2001年度から2016年度第2四半期までの収益率は年間平均2.47%、累計収益額は42兆5,644億円と年金支給にプラスになっている。GPIFは私たち国民の老後生活がかかっているため、自然と関心度は高くなるが、その実績については冷静な視点で見ていくべきである。(提供: みんなの投資online

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