家を購入して火災保険に加入しない人はまずいないだろう。我が家を失うことにでもなれば、生活に大きなダメージをこうむることが自明だからだ。生命保険へ入る目的も、公的制度や貯蓄でカバーしきれない事態への備え、それが本来の姿である。見直し前に、加入目的や必要な保障の整理を行いたい。

生命保険に加入するのは何のため?

保険,見直し
(写真=PIXTA)

たとえば、大黒柱や家族の死亡リスク(死亡保険)や病気やけがに遭うリスク(医療保険)。教育費や老後資金への備え(学資・個人年金保険など)に加えて、最近では“働けなくなる”リスク(就業不能保険)など生命保険で備えられるリスクはさまざまだ。

保険に入るほど保障も増えるが現実的な選択ではない。
では、どのように生命保険を見直すべきか。

(1) 我が家の“最悪ケース”に備える

結論から言えば、リスクのすべてを保険で対応しようとせず、家計に与えるインパクトの高い順に備えをすすめるべきである。複数契約がある場合、特約など保障の重複に注意しよう。

共稼ぎの夫婦が、独身時代に加入した保険にそのまま加入していることがよくある。それぞれの収入がどの程度生活費に充てられているかで死亡保障を調整しよう。収入に大きな差があれば、大黒柱の万一が“最悪ケース”にあたる。収入が多い方を優先し、もう一方の保障を減額(あるいは払済に)するなどで保険料を抑えるほうが賢明だ。

(2) 公的年金や健康保険で守られている備えを確認する

生命保険を見直す際、社会保障制度の仕組みを理解することが大切だ。よく言う、公助・相互扶助・自助の順に現状確認をするのがセオリー。加入制度によって遺族年金額や医療給付の仕組みが違うため、必要な死亡保障や医療保障、貯めるべき老後資金は大きく変わるからだ。

一般的に自営業者は、遺族年金や健康保険制度の違いなどから、サラリーマンよりも自助努力が必要になる。事業規模にもよるが、死亡保障に加えて医療保障も手厚くすべきであろう。

(3) 侮れない勤め先の福利厚生制度

続いて、団体保険(グループ保険)の有無やその内容、健康保険組合の付加給付や組合員向けサービスなども忘れずに確認したい。とくに団体保険は、額面の保険料から実質割引になる割戻金の割合が高いことでも知られる。共済ほど知名度はないが、家計にやさしい制度なので勤め先に一度はたずねてほしい。

30代40代のライフイベントと必要保障額の関係を考える

加入する目的や自助努力が必要な保障の種類・保険金額を明らかにできれば、加入している生命保険が我が家に見合った内容かがわかる。ライフイベントに沿って生命保険の見直しポイントをまとめたので参考にされたい。

●Q1 結婚したら、必ず生命保険に加入すべき?

そうとは限らない。死亡保障が必要かどうかは、配偶者の職業や収入次第である。ただし、医療保障については夫婦それぞれ別個に備えておこう。

●Q2 子どもが生まれたら死亡保障は必要?増やすべき?

貯蓄や不動産などを保有する資産家であれば不要。一方、貯蓄のない若い世帯ほど保障の積み増しが必須だ。現在の死亡保障と必要な保障額の差を確認し、早期に不足分を手当てしよう。

●Q3 マイホームを買ったら、死亡保障は減額してもOK?

団体信用生命保険(団信)加入により、契約者が死亡した場合住居費がほとんどかからなくなるため、死亡保障額を減額してもおおむね問題ない。ただし、契約者の健康状態や家族が増える見込みの方はしばらく保障を維持したほうがよい場合も。

●Q4 教育費はやっぱり学資保険がベストチョイス?

学資保険はおすすめしない。なぜなら2017年4月から保険料値上げを予定する保険会社が複数あるからだ。ただし、定期預金など貯蓄では取り崩す可能性が大きい場合、たとえば、学資保険の代わりに低解約返戻金型の終身保険や勤め先の財形貯蓄などで貯める手もあるだろう。

医療保障の見直しについては、加入する健康保険や職業、がんへの備えに対する考え方で判断しよう。転職や独立など社会保障制度の切り替えがあった場合も見直しすべきだ。

保険料を下げる目的で生命保険の見直しに着手する人が少なくない。家計支出を抑えるよい手段ではあるが、せっかく見直しするならば、我が家にとって影響の大きいリスクとは何か。加入中の生命保険はその目的に合っているか。保障内容は必要にして十分か。こうした視点で再点検を行うべきであろう。
海老原政子 ファイナンシャルプランナー
国内生保の生命保険募集人として勤務。ライフプラン全体から生活者視点・女性目線を活かしたアドバイスが好評。コラム執筆や家計相談、個人・企業向けマネープランセミナーを行う。エムプランニング代表。(AFP、住宅ローンアドバイザー)

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