生命保険の見直しに限らず、何かを変える前には現状把握が必要だ。まず保険証券と届け出印を探し出そう。しかし証券はあったものの、「自分に必要な保障額(以下、必要保障額)はどれくらいか?」「保険証券で確認すべき項目と読み取り方がわからない」など、証券を見つけた後に新たな壁が立ちはだかる。今回は、これら2つについてまとめてみたい。

必要保障額の求め方

保険,見直し
(写真=PIXTA)

(必要保障額)=(必要な遺族の生活費)−(資産+公的年金+その他収入)

既婚者で主な稼ぎ手が求める必要保障額とは上の計算式であらわされる。
つまり、遺族となる人数が多いほど、また生計を維持すべき年数が長いほど必要な生活費は上がり必要保障額もアップする。【子どもが生まれた時が必要保障額のピーク】と言われるゆえんである。

とは言え出産間近で喫緊に生命保険の見直しが必要なこともあるだろう。その場合は、厳密な計算はせず、当座の生活費と、子どもに残したい教育資金を目安にして契約を優先する考え方もある(保険金額は後から調整可能だからだ)。

年収400万円の30代既婚男性(妻:専業主婦)が子の出産を前に保険の見直しをするケースでは、妻がフルタイムで職を得るまでの生活費として400万円×3〜4年、加えて、子どもの教育費として1,000〜1,500万円。念のため、緊急予備費として300万円程度を想定しておく。こう考えれば2,500〜3,400万円の死亡保険を検討すればよい。

共働き世帯であれば当座の生活費をなくす。住宅ローンがあれば団体信用生命保険の保障分を生活費から差し引いて考える。その後子どもが生まれたら、教育費プラスαの死亡保障の増額をすればよい。

以上に加えて職業的なリスクも考慮してほしい。たとえば遺族基礎年金しかない自営業であれば、さらに死亡保障を1,000〜2,000万円積み増すなどだ(脱サラした場合も同様に見直した方がよいだろう)。

加入保険証券で確認すべき項目と確認方法

必要な死亡保障額が定まったところで現状の保障内容を証券から読み解いていこう。

(1) 契約関係を最初に確認する

契約者と被保険者、保険金受取人との続柄によってかかる税金の種別が変わる(相続税・所得税・贈与税など)。たとえば死亡保険であれば非課税(500万円×法定相続人数)の適用を受けられるかどうか。個人年金保険であれば、個人年金保険料税制適格特約という文言があるかなど税制上のメリットを最大限に活かした契約か確認されたい。

(2) 払込期間/保険期間はいつまで?

いつまで保険料を払うのか、また、保険料の更新の有無を確認する。更新ありの場合、子の大学進学と時期が重なると、学費と保険料のアップで将来の家計収支が厳しくなることが読み解ける。生命保険の見直しに合わせて払込期間を変更するか、あるいは死亡保険金を年金のように受け取る収入保障保険にするなど適した保障内容に見直したい。

(3) 契約年はいつ?

予定利率が高い“お宝保険”かどうかの見極めがここでできる。おおむね1995〜1999年であれば高い予定利率の可能性大だ。解約ではなく、主契約だけ残せればその部分のみ保険料を支払う。払済保険にして別に掛け捨て保険に加入するなどの対応ができる。

(4) 主契約は?/どんな特約がある?

終身保険なのかアカウント型の保険か。また、保険料が高い場合、主契約が手厚いケースもある。もし保険料支払いが厳しいようであれば、主契約を最小限にして新たに掛け捨てタイプの死亡保険に加入するなどで保障を得ながら保険料カットができる。必要保障額との比較は、主契約と定期特約を足した保険金額で行えばおおむね間違いない。

(5) 保険料の内訳/解約返戻金の推移

証券内に内訳記載のない場合もあるが、もし特約保険料が個々にあればその金額を参考に不必要な特約を解除する手も。また、経過年数毎の解約返戻金の記載があれば、その推移をチェックすべきである。年を経るごとに解約返戻金が減っている場合は要注意だ。転換契約などで、元々の保険で積み立てられていたお金の中から新しく契約した保険の保険料に充当されている部分があることが多い。この場合は、保険契約そのものを見直すほうがいいだろう。

必要保障額をどのように考えるべきか、自分で決められれば、証券を確認することで現状把握可能だ。加入中の生命保険に過不足がないか、無駄な保障がないかなどを見極めることができる。また、契約関係や予定利率の高低、更新時期とライフプランが合っていないなども保険証券から読み取り可能だ。確かにとっつきにくさはあるが、家族の幸せのためひと踏ん張りしてみては?
海老原政子 ファイナンシャルプランナー
国内生保の生命保険募集人として勤務。ライフプラン全体から生活者視点・女性目線を活かしたアドバイスが好評。コラム執筆や家計相談、個人・企業向けマネープランセミナーを行う。エムプランニング代表。(AFP、住宅ローンアドバイザー)

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