私は、商売において仲間は不必要だと思っています。だいたい「私たち、仲間だよね!」なんて言ってくる人間ほど、実はこちらを利用しようとしている人だというのが通例です。挙句の果てには「協力し合うのが仲間として当然だ!」なんて強制してくる場合もあるでしょ? そんなのは仲間だなんて言えませんよね。

(本記事は、「税理士は社外重役であり顧問先の番犬」を信条とする税理士、岩松正記氏の著書『経営のやってはいけない!残念な会社にしないための120項目 増補最新版』 クロスメディア・パブリッシング 2016年11月21日)の中から一部を抜粋・編集しています)

確かに、人間関係の本質というか人間の心の最深部にあるのは、自分にとって利があるかどうかを考える心、ぶっちゃけて言えば「スケベ心」だと思います。何かしら自分に得や利益が無ければ人は動かないもの。しかし、利害関係だけでつながっている間柄でいいのかというと、それもすごく残念です。

では、本当の仲間とはどういう関係でしょう。それはやはり、好き勝手言える相手、気の置けない間柄、ではないでしょうか。そして結局は、利害関係の無い者どうし、ということになるような気がします。

だから、意味もなく協力し合うのはどうかと思います。やはり、無理して付き合うくらいなら止めておいた方がいい。

自分で会社を経営する最大の利点というのは、もしかしたら、こんな風に付き合う相手を選べることなのかもしれません。そうは言ってもお金のためになら嫌な相手にも頭を下げることも必要だろ!なんて批判が来そうですが、そういう意見には私はこう言いたい。

だから「仲間とは商売にならないのでしょう?」と。自分の儲けのためにモノを買ってもらうなど、「仲間」を商売相手にしちゃイカンのです。

ロータリーやライオンズも入るなら真剣に

経営
(写真=PIXTA)

人脈を広げるのに手っ取り早いのが、既存の団体に入ること。例えば経営者向けで有名なものとしては、ロータリークラブやライオンズクラブ、若手経営者向けなのが青年会議所(JC)や商工会議所青年部(YEG)、ある種特異な雰囲気を持っている倫理法人会や中小企業家同友会など様々な団体があり、それぞれが勉強会や講演会、交流会など活発に活動しています。

これらの会合に入る表向きの理由はいろいろありますが、ぶっちゃけて言えば、スケベ心が無ければ参加や入会するわけがありません。結局は、自分の仕事に役立てたい、というのが本音だと言っても過言ではないでしょう。事実、私は現在ロータリークラブと倫理法人会と商工会議所青年部に所属し、これらを通じて知り合った方々から、直接にも間接にも仕事を頂いたりしています。

しかしながら、絶対に間違ってはいけないのは、私がこのような活動から仕事を得たのは単なる結果であったに過ぎない、ということ。いわば「会」で積極的に活動していたのを認められたからなのです。

事実、私はある先輩経営者にこう言われました。「会に入ってすぐに仕事が取れるとは思うなよ。あんたが信用に足る人物か使える人物か、我々は値踏みをしているのだからな。最低でも半年、普通は1〜2年一緒に活動した上で、こいつに仕事を頼んでもいいかどうか判断するのだから」これだけ本音を語ってくれた某社長には今でも感謝しています。

それゆえ、これらの「会」や「団体」に参加することですぐに仕事を取ろうと考えている人にとっては、逆に、これらに参加することは全くムダです。

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営業に結びつきやすい「ゴルフ」も諸刃の剣

ゴルフほど営業に結び付く行事は珍しいです。むしろ費用対効果から言えば、多くの異業種交流会などよりも成約率は高いようです。

今は亡き私の師匠の税理士は、年100回コースに出るほどのゴルフ好きでした。口癖は「私はゴルフのおかげでお客が増えた」。師匠によると、ゴルフは「一日中一緒にいるから親密になれる」ので、社長や銀行の支店長などとコミュニケーションを取るには最適とのこと。

師匠は本人の弁によるとゴルフ場でのマナーが大変良かったそうで、そのおかげか、お誘いはひっきりなしにありました。そして現に、顧問先の紹介も多くあった。まさに「芸は身を助く」で、変な話、仕事で多少、間違ったとしてもゴルフ仲間ということでスルーされていた点もありました。

実際、経営者というのは概して孤独で、同じ趣味をやる相手などいないものです。そのため、経営者ルフや釣りなどを一緒にやってくれる相手というのは大変貴重で、そういう趣味の仲間が仕事のパートナーになるということは、案外多いように思えます。

ビジネス上の付き合い方というのは、21世紀になってもそう変わるものではありません。むしろ最近、ゴルフをしない若手経営者が増えているので、ゴルフができるということは、逆に大いなる差別化に役立つはずです。

しかしここでも注意しなければならないのが、深い関係になりやすい分、逆に、人間性を見透かされる危険もあるということです。

岩松正記
税理士。山一證券の営業、アイリスオーヤマの財務・マーケティング、ベンチャー企業の上場担当役員、税理士事務所勤務を経て、10年間に転職4回と無一文を経験後に独立。