つい言ってしまいがちな、間違った話し方を直そう!

仕事で使える,損しない,言い換え,フレーズ
(写真=The 21 online)

初対面、プレゼン、部下指導、雑談など、さまざまなビジネスシーンで、ちょっとした言い方の違いで「損」な印象を与えていることも。どんな言い方をすれば良い印象を与えられるのかうかがった。

初対面、上司への報告編

初対面1
×「わざわざお越しいただきありがとうございます」
○「本日はお忙しい中、お越しいただきありがとうございます」

「わざわざ」という言葉は「~なくてもいい」という否定が続くネガティブワードなので、使わないほうがよい“余計なひと言”。それよりも時間を作って訪問してきてくれたことに対して丁寧に感謝を述べましょう。

初対面2
×「お噂はかねがねうかがっています」
○「非常に国際感覚に長けていらっしゃるというお噂を、かねがねうかがっております」

「お噂はかねがね」だけだと、言われたほうは「どう噂されているのだろう」と疑心暗鬼になってしまいます。よい噂なら具体的に伝えましょう。失敗などのよくない噂ならば、意味ありげでいい印象を与えないので「いつも御社には大変にお世話になっております」といった一般的な挨拶にとどめましょう。

上司への報告3
×「A社との取引は絶対にしないほうがいいです」
○「A社との取引は、私どもにとって、◯◯の点で有益ではないと考えます」

「絶対」という表現は感覚的なので、ビジネスシーンにはふさわしくないワード。「◯◯の点で」「◯◯の可能性があるので」などと論理的な裏づけを示しましょう。同様に、「ふつうは」「誰もが」といった表現も感覚的で抽象的。あまり多用すると“論理性に欠ける人間”と判断されかねません。

上司への報告4
×「次のB社との打ち合わせは○月×日になりました」
○「次のB社との打ち合わせは○月×日になっておりますが、ご都合はいかがでしょうか?」

お願い事や依頼をするときは「決定形」ではなく、「疑問形」で伝えましょう。「~になります」「~してください」という伝え方は“小さな命令”を感じさせるニュアンスがあります。あくまで相手に決定権があるというへりくだった伝え方をすると、相手も気持ちよく受けとることができます。

上司への報告5
×「やってみますが、難しいと思います」
○「難しいと思いますが、やってみます」

同じ言葉を使っていても、“伝える順番次第”で印象は180度変わります。好印象を残すためには「ポジティブな言葉をあとにもってくる」こと。最後の締め言葉が、相手の印象に一番強く残るのです。

上司への報告6
×「今度の新人は仕事が遅くて使えません」
○「今度の新人はマイペースですが、仕事が丁寧ですね」

ネガティブな言葉を使う人は、自分自身のイメージも下げてしまっていることに気づきましょう。逆に、後輩の長所を見つけようとする姿勢は、先輩としての面倒見の良さや器の大きさを感じさせます。また、新人を否定することは、採用を決めた上司を否定することにもつながりかねないので慎重に。

部下への指導、会議・プレゼン編

部下への指導7
×「とりあえずプレゼン案、いくつか出してくれる?」
○「次回はぜひ、うちの部のプレゼン案を通したいから、いくつか出してもらえる? 力作、期待しているよ」

依頼や指導をする立場の人は「とりあえず」はNGワード。本来、こちらの意図や想いを込めるべき言葉を「とりあえず」に置き換えてしまっているから、部下には何も伝わらないのです。「今回は絶対勝ちたいから」「君はうちのエースだから」と意図を明確に言語化して相手に伝えましょう。最後にポジティブなメッセージを伝えればさらに良いでしょう。

部下への指導8
×「あとは私がやっておいてあげるから」
○「あとは私がやっておくから」

いつのまにか「あげる病」にかかっていませんか? 「~あげる」という言い方は、「私がわざわざやってあげる」という恩着せがましいニュアンスが含まれ、せっかく手伝っても相手には感謝されないという残念な結果にも……。「私がやる」と自分の意思として伝えたほうが、結果的により感謝されます。

部下への指導9
×「○○くん、君はどうしていつも間に合わないんだ」
○「○○くん、きちんと締め切りを守ってくれないと私が困るんだが、なんとかならないかな」

「どうして」「いつも」という頭ごなしの言い方は、部下の人格や過去まで丸ごと否定してしまいます。頑張ってほしい気持ちを伝えるならば、相手を主語にする「YOUメッセージ」より、自分を主語にする「Iメッセージ」が効果的。相手を批判するトーンが抑えられて、相手の心に訴えかける指導ができます。

部下への指導10
×「君のこと、A社の田中さんから仕事が遅いって言われたよ」
○「A社の田中さんの性格を考えると、連絡はできるかぎり早くしたほうがいいよ」

第三者からの悪い評価は本人に伝えないのは人間関係の大原則。これでは伝えた上司も一緒になって批判しているかたちになり、部下は二重に傷つくからです。批判はそのまま伝えるのではなく、自分の中で噛み砕いて「アドバイス」に変えること。こうすれば、部下を傷つけずに行動の改善を促すことができます。

会議・プレゼン11
×「どこがいけないのですか?」
○「部長のお考えを反映したいので、ご意見をうかがえますか?」

会議の席で上司から提案をダメ出しされたとき、「どこがいけないのですか?」では、「どこが気に入らない?」と喧嘩腰に聞こえてしまうことも。曖昧なニュアンスを含む言葉遣いは、誤解や行き違いを生みやすくビジネスではNG。「あなたの意見を聞きたい」という気持ちを言葉にして伝えましょう。

会議・プレゼン12
×「どう考えてもA案が良いと思います」
○「B案も良いのですが、◯◯の点でA案が捨てがたいのですが、いかがでしょうか?」

対立関係を作らずにA案に引っ張るには、B案をバッサリと切り捨てないことが重要。A案に集約していくには、B案も認めつつB案を押す人に「A案はいかが?」と提案し、A案のフィールドに乗せること。これがスマートかつ円満に結論に誘導する会議のコツです。

雑談、商談編

雑談13
×「本当に。あんなに人使いの荒い部長、今までいなかったよね」
○「そういうふうに言っている人も結構いるよね」

「A部長って人使い荒いですよね」と言われ、うっかり同調してしまうと、巡りめぐって本人の耳に入り、首謀者扱いされることもあるので要注意。巻き込まれそうになったときは、否定も同調もせず、「そうなんだ」などと“受容”でかわしましょう。「大変だったね」と同情するのもあり。そのあとは深追いせず、さりげなく話題を変えましょう。

雑談14
×「そうですか? 私はそう思いませんが」
○「そうですね。私もそんなことがあります」

相手が同意を求めてきたとき、「そうですか」と答えるか、「そうですね」と答えるかは大違い。「そうですか」の返事は、思っている以上に否定されている感じが強いので、些細なことなら同調しておくのが無難です。

商談15
×「おはようございます。今日はよろしくお願いいたします」
○「おはようございます。本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございます」

「今日はよろしくお願いいたします」が悪いのではないのですが、至極一般的。商談では、もう一つ格上の敬意を払った言葉で伝えましょう。そして、冒頭で率先して「ありがとう」のひと言を入れると感じが良く見られ、良好な関係を築くいいスタートが切れます。

商談16
×「いやー、とても参考になりました」
○「大変勉強になりました。今後の業務に生かしたいと思います」

話を聞いたあとに「参考になりました」と返すのはNG。「参考」は、相手の話の中から取り入れるところがあったら取り入れるという意味で、上から目線のニュアンスを含んでしまうからです。ここは「勉強」に置き換えて。さらに「どう勉強になったのか」「今後どう生かせるのか」を伝えられると、真剣に聞いたことが伝わります。

商談17
×「でもばかりでは、話が前に進まないのではないでしょうか」
○「では、どのようにすればよいとお考えですか?」

何を言っても相手から反論される。そんなときも、決して批判をしてはいけません。ここはむしろ質問をすべき。相手の意見を求めることで謙虚で真剣な姿勢が伝わり、決裂しかねない張り詰めた空気を切り替えることができます。

商談18
×「私はぜひお引き受けしたいのですが、上のものがダメだというもので」
○「今回は◯◯の点で、お引き受けできないのですが、ぜひ次回は実現したいと思いますのでよろしくお願いいたします」

相手にとっては、あなたが交渉相手であり、会社の代表者。背後にいる上司や会社組織を引き合いに出すのは、無責任ととられかねません。「◯◯の点で、お引き受けできません」と理由を伝えることも相手への誠意です。また、このプロセスを踏んでおくことで今後、合意を導き出しやすくなり、建設的な関係を築けます。

接待、電話対応、飲み会編

接待19
×「今日はお招きいただきありがとうございます」
○「いいお店ですね。よくいらっしゃるのですか?」

接待される側にも気遣いは必要です。接待する側はこの日のために念入りに準備を進めていますから、店と料理については最低限ほめておきたいもの。席についたら、先方の緊張を解きほぐすためにも、形式ばった挨拶よりも「ほめる」ことからスタートしましょう。いい雰囲気で宴が始まり、あなたの度量と気遣いも伝わります。

接待20
×「何か食べられないものはありますか?」
○「何か苦手な食材などありますか?」

「食べられない」という言い方は、子供に聞くようで礼を欠いた印象を与えます。「苦手」に置き換えて確認しましょう。可能であれば、事前に秘書や本人にリサーチするか、その場でお店の人に聞いてもらうのがベター。取り分け料理などのときは、さらっと聞けると好印象です。

接待21
×「いえいえ、とんでもない。まだまだです」
○「ありがとうございます。お言葉を本人に申し伝えます。励みになると思います」

接待の席で、部下の仕事ぶりをほめられたら、感謝して受け止めましょう。「まだまだです」は一見謙遜しているように見えますが、相手のせっかくの好意を否定してしまっています。さらに、相手の持ちかけた話題を終了させてしまい、空気が白けてしまうことも。感謝して受けることで、会話も続きやすくなります。

電話対応22
×「すみません。○○は、今日は休みをとっています」
○「申し訳ありません。◯◯は本日休みをとっておりまして、もし私でよければ何か承れることはございますか?」

休みの同僚にあてた電話がきた場合、こちらで対応できることがないか確認することは、最低限のマナーです。ちょっとしたひと言の差ですが、電話の取り次ぎには会社全体の姿勢や雰囲気が現われます。このひと言があるかないかで、会社への評価も変わってくるでしょう。

電話対応23
×「ではもう一度ご説明させていただきますが」
○ご説明が至らず失礼いたしました。ただいまの件ですが……」

丁寧に対応しているつもりかもしれませんが、理解できない相手が悪いというニュアンスを含んで聞こえることも。まずこちらから「失礼いたしました」と詫びることで、質問した相手に恥をかかせないようにしましょう。これは電話対応だけでなく、接客シーンなどの対面でも同様です。

飲み会24
×「○○くん、次の飲み会の幹事、やってくれるよね?」
○「○○くん、悪いんだけど、次の飲み会の幹事、頼めるかな?」

相手に有無を言わせない話し方をする人は、「なんかあの人感じ悪い」と嫌われがち。たとえ上司や先輩からであっても、命令されていい気分になる人はいません。人に依頼や命令をするときは「相手の意思を尊重する頼み方」をしましょう。お互いが気持ちよく仕事を進めるためのコミュニケーションの潤滑油です。

飲み会25
×「すみません、今日はちょっと予定がありまして」
○「ありがとうございます。ぜひご一緒したかったんですが、今夜は外せない用事がありまして、次回はぜひご一緒させてください」

上司から誘われた飲み会を断わるとき、まずは声をかけてもらった感謝の気持ちを伝えましょう。そのあと「次回はぜひ」など、次につなげる言葉で締めくくれば、断わられたほうも悪い気はしません。また、「来週はいかがですか」などとこちらから提案するのも喜ばれるでしょう。

渡辺由佳(わたなべ・ゆか)話し方・ビジネスマナー講師
1964年、東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、テレビ朝日にアナウンサーとして入社。93年、独立。マナースクールや大学で話し方、言葉づかいに関する講義を行なう他、ビジネスマナーやコミュニケーションをテーマに企業向けのセミナー講師も務める。著書に、『会話力の基本』(日本実業出版社)など多数。(取材・構成:麻生泰子)(『 The 21 online 』2017年4月号より)

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