イラッとさせない話し方のコツとは?

タイプ別,損する話し方,克服ガイド
(写真=The 21 online)

「自分は話下手だ」「うまく話せない」。そんな悩みを抱えている人は多いだろう。話し方の改善をする前にまず知っておきたいのが、その原因がどこにあるのかということ。話し方のスペシャリストのお2人に、問題の原因と改善点をうかがった。

④「自己主張ができない」人

「否定されたくない」気持ちで自縄自縛に

声を張れない、語尾がボソボソと小さくなる、「たぶん」「おそらく」を多用し、断言を避ける──自己主張ができない人の話し方には、端々に「自信のなさ」がにじみ出ている。

「自信なさげな態度は、ビジネスマンにとって致命的な弱点です。部下や後輩にこんな人がいたら、上司はいい仕事を回すはずがない。上司自身がこのタイプなら、部下がついてくるはずがない。本当は実力があっても、『言えない』ことで強みが人に伝わらないとしたら、もったいない話です」(森下氏)

自信のなさの背後にあるのは、「恐怖感」もしくは「無力感」だと西任氏は言う。

「意見が言えない人には、2タイプあります。1つは、否定されるのを恐れる人。声を発する勇気が出ず、意見があっても話に入るタイミングをつかめないでいることが多いですね。

もう1つは、かつて否定された経験があることで『どうせ』と無気力になっている人。また傷つきたくないので口をつぐんでしまうのです」(西任氏)

この両者に共通して必要なのは、否定を重く捉えすぎないことだ。

「否定が怖い人は、意見を否定されること=人格を否定されることと捉えがちです。意見やアイデアを否定されたとしても、それは自分自身を否定されたことではない、ということに気づくことが大切です。また、無力感のある人は、かつての経験と現在を分けて考えること。次はうまくいく可能性も、十分にあるのですから」(西任氏)

「断言する」ことで、自信は後からついてくる

とはいえ、自信喪失している人が勇気を出すのは難しい。その壁を越えるために、まず何をすべきだろうか。

「その方法はいたってシンプルです。『思います』ではなく『です』と断言する。『たぶん』という口ぐせを止める。そして、語尾までゆっくり、しっかりとした声で言う。内心ドキドキしていても、まずはこれらを実践しましょう。つまり『形から入る』作戦です。

自己主張ができない人は、自信たっぷりになれる根拠がない、と考えがちですが、自信には本来、根拠などありません。ビジネスマンは皆、最初は実績ゼロなのですから。営業マンだとしたら、自分はできる営業マンだと思い込むことが第一歩です」(森下氏)

話し方が変わると、相手の受ける印象も変わる。結果として意見が受け入れられ、それにより自信がつき、さらに主張できるようになる──という好循環が起こる。

また、小さな成功体験を積んでいくのもお勧めだ。

「最初から『大勢の前で意見を主張する』ことを目指さず、まずは親しい同僚にアイデアを話してみてはどうでしょう。そこで『いいね』と言ってもらえれば勇気が出ます。こうして少しずつ達成感を積み重ねることで、自信を構築していきましょう」(西任氏)

⑤「すぐに緊張してしまう」人

「良く見せよう」と思うから緊張する

大勢の人の前で話すときは頭が真っ白。1対1でも、相手の立場が高かったり苦手なタイプだったりすると言葉が出てこなくなる。もちろん当意即妙な受け答えなどできず、すぐにしどろもどろになる──。これではそもそも会話にならず、相手の信頼も失いがちだ。

こうした、すぐに緊張してしまう人には共通して見られる傾向がある、と森下氏。

「緊張している人が考えていること、それは『自分がどう思われるか』です。声が上ずっていないだろうか、顔が引きつっていないだろうか、と自分のことばかり考えている。会話中に自分の心配しかしないのは相手に対して失礼ですし、言葉が出てこなくなって、自分自身も損をします」(森下氏)

つまり緊張の裏には、自分を良く見せようとする心理が働いている。「いいことを言おう」とするから、ますます緊張してしまうのだ。

「ユニークで印象的なことを言おう、高尚でカッコいいことを言おう、と思いすぎて、自分でハードルを上げてしまっているのです。目に映ったものは、何気ないと思える内容でもどんどん口に出す練習をするといいでしょう」(西任氏)

相手が予想外の反応をして会話に間が空いても、慌てる必要はない。

「たとえば、パーティーで赤ワインを飲んでいる相手に『赤ワインがお好きなんですか?』と聞いて、『いいえ』と素っ気なく答えられたら、このタイプの人は『え、どうして!?』とフリーズしがち。でも、『赤ワインを飲んでいらしたから、お好きなのかと思いました。どうして飲んでいらっしゃるんですか』と、思ったことをそのまま言えばOK。戸惑いを素直に表現すればいいのです」(西任氏)

相手を観察すれば緊張はスッキリ消える!

もともと緊張しやすい性質の人でも、「ある方法」によって劇的に改善できる、と森下氏。

「自分がどう見られるか、という視点を180度転換させ、徹底的に相手を観察することです。『この人はどんな人だろう』『この人を楽しませる方法はなんだろう』という考えに集中すれば、緊張が入り込んでくる余地はありません」(森下氏)

相手を見るコツは、顔だけでなく全体を見ること。持ち物やアクセサリーに着目するのも効果的だという。「お洒落だ」「綺麗だ」などとポジティブな感想を持てば、相手を楽しませる意思はより強くなる。

「大勢の前で話すときも、場全体を見ること。一番先に入室し、内装や机のレイアウトなどを眺める。人が入ってきたら人数を数える。見られる側ではなく、見る側に回れば場のイニシアチブが取れます」(森下氏)

また、身体を使うことで、緊張を解消する方法も。

「緊張すると文字どおり『腰が引ける』もの。そんなときは、勇気を出して一歩前に出るようにすると、不思議と言葉が出てきますよ」(森下氏)

⑥「つい感情的になってしまう」人

イライラの原因は常に自分の中にある

職場では、思うままにならない場面が頻発するもの。それらのストレスを適宜受け流せる人もいる一方、このタイプの人は小さいことでもすぐに怒りや苛立ちを発生させてしまう。

ミスをした部下を怒鳴りつけたり、意見が認められないと不機嫌になったり……。このような反応を続けていると、周囲に「精神的に不安定で、セルフコントロール力に難あり」と思われてしまうだろう。

こうした人々は、「自分を怒らせる相手に問題がある」と思っているが、それは誤りだと両氏は語る。

「『部下がホウレンソウをしない』と怒る上司は多いのですが、そういう人にかぎって、普段から『報告ありがとう』というひと言を言っていないもの。毎日イライラした様子を見せているせいで部下が寄ってこない、という可能性もあります」(森下氏)

「怒りや苛立ちは、自分のニーズが満たされないときに起きるもの。『ミスをしたくない』という思いが強ければ、部下のミスへの怒りは強くなり、『時間は守るべき』と強く思っていれば遅刻に厳しくなる。つまり、自分の中のこだわりが、怒りを起こさせているのです」(西任氏)

このタイプは総じて自分に厳しく、他人にも厳しい。

「自らに対して『こうあるべき』という理想像が明確な人が多いですね。しかし、それは逆に言うと高い理想を持っていて、『今の自分ではダメだ』と思っているということ。そんなとき、理想に反する行動を他者にとられると、見たくない自分を見せられた気がして、心の安全を脅かされます。この状態になると、人は反射的に感情的になるのです」(西任氏)

小さな気分転換でイライラをリセット

そうした自分の心理に気づき、認めることがまずは必要だ。

「安全を脅かされて攻撃的になったり心を閉ざすのは、いわば動物的な反応です。そんなときは、まずひと呼吸。そして、『今、自分はイライラしているのだな』と受け入れること。それから、『自分は時間を守ることを大切にしているんだな』とニーズを考えていくと、だんだんと冷静になれます」(西任氏)

また、自分の成長のチャンスとして捉える視点も有効だ。

「相手の言動に苛立つのは、自分の中にも同じ種があるから。だとすれば、『自分がステップアップする課題を見せてもらえたのだ』と発想の転換をすることも可能でしょう」(森下氏)

それと同時に、シンプルな気分転換を行なうのも良い。

「その場をひとまず離れると視界が変わります。すると気分も変わるもの。トイレに行く、給湯室で水を一杯飲むなど、場所を変えて気持ちをリセット。

また『指ぶら体操』もお勧め。腕を垂らして、濡れた手の水を切る感覚でブラブラと振ります。すると、頭に上った血が下がり、ピリピリした神経も穏やかになります。これは力を抜いて行なうことがポイントで、緊張をほぐすのにも有効です」(森下氏)

西任暁子(にしと・あきこ)U.B.U.[株]代表取締役
大阪府生まれ。慶應義塾大学在学中よりFMラジオのDJとして活躍し、話し手・聞き手の両方の立場から「わかりやすく伝える方法」の探求を重ねてきた。2012年、U.B.U.㈱を設立。現在は、スピーチやファシリテーション、コミュニケーションを軸に企業の人材育成に従事。著書に、『本音に気づく会話術』(ポプラ社)など多数。

森下裕道(もりした・ひろみち)[株]スマイルモチベーション代表取締役/パーソナルモチベーター
接客・営業コンサルタント。大学卒業後、㈱ナムコへ入社し、異例の速さで店長に抜擢。独自の接客法で多くの不採算店舗を立て直す。現在は、接客、営業、人材育成、人間関係のコミュニケーションの観点からコンサルティングや講演活動を行なう。著書に、『人前であがらずに話す技法』(大和書房)など多数。(取材・構成:林加愛)(『 The 21 online 』2017年4月号より)

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