ゴールデンウィークが明けて大手企業の決算発表が相次ぎ、その内容に市場関係者の注目が集まる時期だが、知名度はグローバル企業に及ばないとしても、その業績は一目置くべき成果を上げている企業がある。食品ディスカウントストア「ラ・ムー」「ディオ」などを展開する大黒天物産 <2791> は、創業以来30期連続で増収増益という快進撃が続く。

消費者の節約マインドが広がり、小売り大手イオン <8267> 傘下のイオンリテールが食品の値下げに踏み切るなど、小売業を取り巻く環境が厳しさを増す中、大黒天物産が成長を続けられる理由はどこにあるのだろうか。

7年で業績倍増の急成長

大黒天物産,激安スーパー
(画像=Webサイトより)

大黒天物産の2017年5月期第3四半期の連結決算によると、売上高は前年同期比7.3%増の1149億7400万円、営業利益は同6.5%増の45億2900万円、純利益は6.7%増の28億1700万円と好調を維持し、31期連続の増収増益が視野に入ってきた。

さらに注目すべきはその成長のスピードだ。売上高は09年の734億5100万円から16年には1451億1800万円、純利益も09年18億200万円から16年に33億7900万円と、わずか7年の期間でそれぞれ倍増近い伸びを示している。

大黒天物産が展開する店舗は西日本を中心としているため、関東在住の消費者には馴染みが薄いだろう。グループの中核を成すのは、メガディスカウントストアと位置づけられる「ディオ」と、複合型のメガディスカウントランドの「ラ・ムー」だ。

前者の特徴は、大型店舗戦略の下、店舗面積が1000平米-1500平米以上のワンフロアのスーパーで、酒類も扱う。後者は、単独店舗のディオより大きな商圏をターゲットにし、ワンストップショッピングを可能とする複合商業施設だ。この2つの形態の店舗を含め、グループ全体で111店舗(16年5月末時点)を展開する。さらに、このうち82店舗は24時間営業となっている。

一品大量仕入れで低価格実現、PB商品も充実

大黒天物産のディスカウントストアが消費者の支持を集めるのはなんといってもその商品の安さだ。チラシに掲載された商品を一例に挙げると、惣菜のコロッケが1個39円、米10キロ2999円(いずれも税込)など、節約マインドに応える価格設定となっている。グループ全体で「エブリデイ・セーム・ロープライス」を掲げており、取扱い商品を絞り込み、一品を大量にメーカーや一次卸問屋から大量に仕入れるほか、独自の仕入れルートを開拓することで価格を抑えられるという。

さらに、自社のプライベートブランドである「D-PRICE」は、原料から開発し、あくなき低価格への追及を目指している。

市場の動向と商品購入の背景を徹底的に分析し、購買意欲が高いと判断した対象の商品化を検討。原料の調達、製造、物流までコスト削減に挑戦して、価格と商品のバランスを見極め、試行錯誤しながら商品化につなげる。

このプロセスを経て店頭に並んだプライベート商品は、消費者のニーズの変化に対応するために改良を続け、たゆまぬ企業努力が注ぎ込まれる。こうしてD-PRICEの商品は、他の追随を許さないほどの低価格で、商品を消費者に提供する。例えば、そば玉は15円、パスタのソース(ミートソース・カルボナーラ)が89円、お茶(500ミリリットル)48円、絹ごし豆腐(150グラム×3パック)50円(いずれも税抜き)など、驚きの安さで消費者の心を掴む。

24時間営業が潜在的リスクに?

創業以来、快調に業績を拡大してきた大黒天物産。他の小売り業が節約マインドの広がりを受けて苦戦する中でも、他社とは一線を画してきたが、先行きは決して楽観視できるものではない。

大黒天物産の成長を支えてきたともいえる24時間営業は、コンビニなどより安く、種類が豊富な商品を提供することで売り上げアップにつながったほか、店舗への商品搬入、陳列が時間を問わず実施できることで、効率的な人員配置を可能にしてきた。

しかし、この24時間営業体制を支える人材が確保できないリスクがある。小売業界ではパート、アルバイトの慢性的な人材不足が続いており、人材確保のために時給を上げれば、その賃金上昇がコストとして重く圧しかかってくる。こうした事態を受けて、小売業のほか外食産業でも、24時間営業を見直したり、営業時間を短縮したりする動きも出てきている。

節約マインドの消費者に、徹底した戦略で実現した低価格で訴求し、成長を続けてきた大黒天物産だが、グループの成長の礎ともなった24時間営業に、時代の変化が訪れつつある。こうしたトレンドにどのように対応し、創業以来の増収増益路線を歩むことができるか。大黒天物産の手腕が問われる局面を迎えている。(ZUU online 編集部)